35年前から、仕事にまつわる無意味なことを止め始めました。アメリカ留学のあと、シカゴで数年間働いたのち、故郷・軽井沢に戻り星野温泉4代目に就任した頃です。
無意味だと感じることを続けるストレスは意外と大きいものです。ある時、まずスーツを着ることを止めてみました。数年かけて段々と止めて、最後は銀行にお金を借りに行く時くらいしか着なくなりました。次に止めたのが会食。断ると言っても、意味を感じない会食、行きたいと思えない会食です。時間も長いし、話も直接ビジネスには関係のない内容が多く、ストレスになっていました。止めてみるとそのうち「仕事に悪影響はないな」と実感することができます。
ビジネスマンや経営者の方々の多くが楽しんでいるゴルフもしません。ただし断ってばかりではなく、私からも「スキーに行きませんか? ぜひ」とお誘いします。すると、普通連絡が途絶える。ですからこれも、つながらないポイント。もちろんなかには本当に来て下さる方もいて、それはそれで大歓迎で、スキーやスノーボードなら楽しい時間を過ごすことができます。
いまからちょうど15年前、50歳の節目の誕生日に、「人生最後の日の後悔」について考えました。というのも、星野家は代々、80歳を前にして亡くなっていて、それも大体同じような病気で、みんな同じ遺伝子を持っているのです。
80歳まで残り30年。「もっと仕事をしておけばよかった」と悔やむことはまずなさそうだと考えました。けれど、大好きなスキーは、「もっと滑っておけばよかった」という後悔が、そのままいくとすごく残ると思ったのです。

趣味は、仕事を引退してからでもできると思うかもしれません。しかし、それがスキーの場合には、スキルと体力のことを考えると残り30年のうち前半の方が後半よりも向いています。だから滑走日数の目標を定めて、仕事をしながら滑ることにしました。
年間スケジュールは、滑走目標の80日から組み立てます。夏のニュージーランドに始まり、12月は北米、年明けから国内を転々とし、スギ花粉が飛散する3月は欧州かカナダへ。その後帰国し雪が完全に溶けるまで、滑走予定として午前中をブロックし、午後はリモートで仕事に参加します。雪のない時期には土日を含めて仕事の日程を入れます。
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