楳図かずお(1936〜2024)は、ホラー漫画の『へび少女』や『赤んぼ少女』で人気を得たのち、ギャグ漫画『まことちゃん』を大ヒットさせ、『漂流教室』『わたしは真悟』など壮大なSFも手掛けた。
独自のホラー漫画で世界的な評価を得る伊藤潤二氏(61)は「楳図漫画で人格が形成された」と語る。
ホラー漫画は幽霊や化け物を出して怖がらせるのが普通ですが、「一番怖いのは人間の心だ」と最初に訴えたのが、楳図先生のすごさです。
不老不死で不思議な能力を持つ美少女が主人公の『おろち』は人間の心の闇を扱った深い内容なので、小学校低学年で読んだときはよくわからず、成長してから理解できるようになりました。ストーリーが緻密でドラマ性が高く、なぜ女性の心理がここまでわかるのかと唸らされます。
荒廃した未来に小学校ごと飛ばされる『漂流教室』は子供たちが生き残るために殺し合うなど、漫画のタブーを破るような、楳図先生でなければ描けない作品です。グロテスクな怪物の造形も斬新でした。
『蝶の墓』は、異様なほど蝶を恐れる少女が心理的に追い詰められていくサスペンス。絵も、あの時代の楳図先生の頂点を極めた、非常に芸術性の高い画面です。床の模様や壁紙の柄まで緻密に描かれているし、暗闇は黒く輝いているし、手を抜いたコマがありません。

おそらく私が生まれて初めて読んだ漫画は、姉から借りた『ミイラ先生』です。ミイラが蘇って、ミッションスクールで女生徒を襲う。そのシチュエーションだけで魅力的です。まだ保育園に通っていた頃ですが、美少女がミイラ先生にさらわれるシーンでは、幼な心にエロティシズムすら感じてしまいました。
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