昨年、日本銀行がマイナス金利を解除し、メガバンクの事業環境が激変している。金利が付くようになったことが増益要因のひとつとなり、三井住友フィナンシャルグループは2025年3月期の当期純利益で、過去最高となる1兆1700億円を記録した。
一方、国の財政赤字は拡大の一途を辿っている。国債の発行残高は1100兆円。5月には財務大臣の諮問機関・財政制度等審議会が、国債格下げについて「決して非現実的な話ではない」とする意見書を発表した。日本国債の格付けは、現在シングルAプラス(S&Pの長期発行体格付け、3段階下がるとトリプルBとなる)。この数カ月、買い手が薄くなり、金利上昇のニュースがたびたび報じられた。7月15日の新発10年国債利回り(長期金利)は1.595%と2008年10月のリーマンショック以来の高水準となった。「金利ある世界」で財政健全化と経済成長をどう実現させるのか。中島社長に聞いた。
――まず国債から伺います。格下げの危険性をどう見ていますか。
中島 すぐに格下げになるというリスクがあるとは思っていません。いまは経済成長に伴って税収が増え、インフレに移行している。足元の状況を見れば、日本のソブリンリスク(債務不履行の危険性)は低下していると見るのが正しいでしょう。しかし、日本国債の格付けは、G7の中では、イタリア(トリプルBプラス)に次いで悪いのも事実。今の格付けを維持・向上することが求められます。
そのためには二つのポイントがあります。一つは財政健全化を進めることです。率直に言って、GDP比で200%を超える債務がある状況を健全とは言い難い。その意味では、政府が「財政健全化の旗を下ろさない」と公言し、プライマリーバランス(基礎的財政収支)をゼロに戻すのではなく、黒字化を目指していることは非常にありがたいことだと思っています。
もう一つは、デフレに戻らないことです。デフレ下では、相対的に貨幣価値が上昇するため、債務負担が重くなってしまうからです。
つまり経済成長と財政健全化の両立が求められますが、これは言うまでもなくナローパス(狭い道)。ただ、ここで頑張らないと、将来の世代に禍根を残すことになる。私はこの点を心配しているのです。

――参院選で野党は消費税減税を訴え、自民党は現金給付を打ち出すなど、財政健全化に反する政策ばかりが注目を集めました。
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