文藝春秋にみる平成史 平和、自然災害、IT

半藤氏が選んだ32本は傑作、衝撃作、感動作あり!

半藤 一利 作家
ライフ 社会 読書
半藤一利氏  ©文藝春秋

 私が文藝春秋に入社したのは昭和28(1953)年のことです。今はどうなのか分かりませんが、当時の新入社員たちは入社後すぐに、社名を冠したこの雑誌、月刊『文藝春秋』について先輩から教えを受けたものです。それは次のようなものでした。

「文藝春秋は創刊以来、最初のページは巻頭随筆から始まる。大体、総合雑誌というものは巻頭論文で飾りたてて始まるものだが、この雑誌は『論文』ではなく『随筆』である。要するに、『ためになる』より『面白い』ことを優先する。一原理、一論理に執着して、高邁な理想さえ説けば、あたかも世の中は一変するが如き論文。そんなものは『筆者、編集者、校正屋』の3人しか読まない。論文というのは高尚そうに見えるが、いかにつまらない、無益なものであるかということを、諸君はまず学びたまえ」

 この訓示が、先輩たちによって毎年毎年伝えられていくわけなのです。

 これはどういうことか。要するに「現場主義」と「当事者主義」に徹するということです。どんなに立派な論文を書ける人がいても、その数は日本人の総人口を約1億人だとすれば、1000人がいいところです。そのたった1000人を相手に取っ替え引っ替えで原稿をお願いしても、あっという間に話の種がつきます。ところが、面白い、貴重な経験をした人は日本中にごまんといる。そうしたあらゆる方面の人々に発言の機会を与え、その人の教えを請いたいとするのが、雑誌の編集方針だったのです。

 大正12(1923)年の創刊以来、96年。この2つの精神によって文藝春秋は形づくられてきたといっていい、と思います。

目次の「右半分」と「左半分」

 このたび編集部より、「文藝春秋の記事から平成史を読み解いてほしい」という依頼を受け、はじめは面倒だと思って無視していた。ところが、ある時ふっとやる気になって本社に出向き、3階にある資料室でパラパラと平成の最初の頃の目次を捲ってみたのです。すると昭和の時代と比べて、目次の並びに大きな変化を感じました。

 文藝春秋の目次は折り畳み式になっています。それを広げると、右半分には主に政治経済の記事タイトルが、左半分にはその他の社会、芸能、文芸等の記事タイトルが配置されている。それが平成になって、右側が左側の部分にまで侵食してきているように見えるのです。

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source : 文藝春秋 2019年6月号

genre : ライフ 社会 読書