三千年後の「トロイの木馬」

日本人へ 第191回

塩野 七生 作家・在イタリア
ニュース 社会 国際 歴史

 ここ二、三日のイタリアは、大騒ぎの真只中にあった。習近平が、経済人も加えた二百人もの大世帯でローマに来ていたからである。

 この最高トップの来伊の目的ははっきりしていて、イタリア政府が北京まで行って作成した協定にローマで正式に調印をするためだから、国際上からしてもまっとうな行為なのである。

 それが今になって大騒ぎしているのには、原因があって、それはイタリア人特有の、何ごとに際しても発揮される軽率さにある。

 イタリア人の最も悪い性向は、相手よりも自分のほうが悪賢いと思いこんでいるところだ。

 北京から帰国した政府の要人の話だと、中国の求める一帯一路に協力すればイタリアがかかえている難問中の難問、つまり資金不足と雇用の創出、もすべて解決するということだった。

 こうも楽観的な見通しで中国になびいたのは政府内の与党の一つの「五つ星」で、当然ながら、反対は起る。

 国内からはもちろんのこと、EUからもアメリカ合衆国からも。なにしろ相手は、そんじょそこらの国ではなく中国である。ゆえに巻き起った反対、と言うか不信感も、一言でまとめれば「トロイの木馬」になる危険がある、というものだった。

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source : 文藝春秋 2019年5月号

genre : ニュース 社会 国際 歴史