二度も組織崩壊した

芦沢 雅治 よりそう会長

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 そもそも私が起業を志した原点には、幼い頃のある経験があります。家のすぐそばに養護学校があり、私も毎週のように遊びにいっていたのですが、そこでは様々な境遇の生徒に出会いました。障碍を持ち、呼吸器をつけながら、懸命に生きている生徒が、次の週には亡くなっていた、ということもありました。

 自分がどのような人間として生をうけるか、どのような環境に生まれ落ちるかは、選べないにもかかわらず、それによってその後の人生が大きく左右されてしまう。その不条理に大きな違和感を持つようになり、それを少しでも解消したい、という思いが起業につながっていきました。

芦沢雅治氏 Ⓒ文藝春秋

 具体的には環境や教育、情報などの格差によって弱者とされてしまっている人々が抱える課題によりそって、それらを解決していく事業を世界規模で展開していきたいと考え、2009年、23歳で「みんれび」を起業し、インターネット上で様々な分野の商品やサービスの評価を書き込めるウェブサイト「みんなのレビュー」を始めました。そのなかで発見したのが葬儀に対するニーズでした。家族を看取ったけれどもお寺さんとの付き合いはないし、お葬式に集まる人もそれほどいない。葬儀会社に頼めば、一切合切を取り仕切ってはくれるものの、100万円以上かかるのはどうも納得がいかない。そのようなニーズに応えるために2013年にお客様と葬儀会社のお互いのニーズをうまくマッチングする仕組みを作ることで十数万円から50万円ぐらいの価格帯で葬儀を出せるサービスを始めました。それが現在も社業の核になっています。

 最初の挫折はそれから3年後の2016年に起こりました。会社が順調に成長するなか、創業期からともに歩んできた中心メンバーが、次々と会社を去っていったのです。原因は、事業の成長を急ぎすぎたあまり、社内での合意形成をおろそかにしたことです。私はとにかくスピードを優先し、決めたことに黙ってついてくればいい、という頭ごなしの姿勢で組織を引っ張っていました。十分なコミュニケーションを取ることを怠っていたのです。

 葬儀仲介事業は急成長し、2014年から3年の間で、従業員数は約20人から約90人に、取扱件数も3.1倍に伸びました。私も含めて創業メンバーの多くは、社会人経験をほとんど積まないまま起業に参加していました。急速に拡大した組織をマネージメントする能力の限界を、それぞれが感じはじめていたのです。そのことについて相談を受けてはいたものの、私は起業の志を忘れ、身近にいるメンバーの悩みによりそえず、聞き流していました。今にして思えば、予兆はあったのですが、ある日突然、限界を迎えたメンバーから「しばらく休みたい」という言葉が届きました。それが最後の言葉でした。

プロ経営者に瞠目

 この大きな挫折を糧とすることができないまま、同じあやまちを繰り返し、第二の挫折に直面します。

 それが2018年の組織崩壊です。その発端は、組織内で派閥が生まれてしまったことです。その原因は経営理念の違いといった高尚なことではなく、単に人間の好き嫌いでした。そしてまたも私のコミュニケーション不足から、対立を解消することができず、結果として、能力よりも関係性を優先した人事が進められるのを止めることができなかった。それによって、当時100人ぐらいの会社だったにもかかわらず、要職にあった十数名が一挙に大量辞職するという事態に至ってしまいました。

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source : 文藝春秋 2026年5月号

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