金正恩が確信するトランプとの“信頼関係”
今年2月28日、イランの最高指導者ハメネイ師が米国とイスラエルの空爆で暗殺されたとき、「次の標的は北朝鮮の金正恩総書記ではないか?」との憶測がささやかれた。
だが、ハメネイ暗殺の翌日以降も金正恩は平壌郊外のセメント工場の視察や地方視察を淡々とこなした。自身が出席する最高人民会議の日程も事前に公表し、暗殺を恐れるような素振りは見せていない。
しかし、このとき彼の心は激しく揺れ動いていたはずだ。
1979年のイラン革命以降、北朝鮮はイランと長年にわたって「反米同盟」ともいえる緊密な協力関係を維持してきた。1989年5月、当時イラン大統領だったハメネイは北朝鮮を訪問し金日成主席と会談した。金日成はみずから空港までハメネイを出迎え、もてなした。その翌6月に最高指導者ホメイニ師が死去し、後継者となったハメネイは、制裁回避の「取引パートナー」として北朝鮮との紐帯(ちゅうたい)を強化した。
とりわけ注目に値するのは、核・ミサイル開発での連携だ。北朝鮮は旧ソ連のスカッドミサイルを独自に改良してイランに輸出し、技術移転にも協力している。また、核開発で先行する北朝鮮は、イランに核技術者を派遣していた。両国はシリア北部でも極秘裏に原子炉建設を進め、資金提供はイラン、技術提供は北朝鮮が担当していた。2007年、イスラエルは建設中のシリアの原子炉を空爆したが、情報機関モサドは北朝鮮の技術者が建設現場に常駐していた事実を空爆前に確認している。
核兵器を持たないベネズエラが米国の標的になるのはやむを得ない。しかし、核保有の一歩手前まで来たイランで体制転覆が起これば、北朝鮮も他人事ではない――そんな焦りが金正恩の胸中に生じても不思議ではない。
イラン情勢が日増しに緊迫化する中、2月19日から開催された第9回朝鮮労働党大会で、金正恩は米国に向けメッセージを発信した。
「もし米国が朝鮮民主主義人民共和国憲法に明記された我が国の現地位を尊重し、対(北)朝鮮敵対政策を撤回すれば、我々も米国と良好な関係を保てない理由はない」
これはドナルド・トランプ米大統領に会談を呼び掛けた明確なメッセージである。また、「憲法に明記された我が国の現地位を尊重」という文言は、「我々を核保有国として認めるなら交渉に応じる」という前提条件であると解釈される。
では、金正恩は具体的にどのような朝米交渉を思い描いているのか? また、日本との交渉再開の可能性はあるのだろうか?
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