いま知っておくべき論点を、専門家がコンパクトに解説する「文藝春秋オピニオン 2026年の論点100」。この人気ムックの記事を「文藝春秋PLUS」でも紹介します。
2026年は米国と北朝鮮が首脳外交を繰り広げる年になる。トランプ米大統領は北朝鮮による核・ミサイル開発や深刻な人権侵害に関心はない。あるのは、「朝鮮半島に平和をもたらした」という一方的な主張によるノーベル平和賞受賞への野心だけだ。金正恩総書記はトランプ氏の野望を利用し、自らの体制の強化を目論んでいる。この「取引」は東アジアに大きな混乱をもたらす可能性がある。
トランプ氏は25年8月の米韓首脳会談で「金正恩氏と年内に会いたい」と語るなど、米朝首脳会談への野心を隠さない。トランプ氏と金正恩氏は18年6月にシンガポール、19年2月にハノイ、同年6月に南北軍事境界線がある板門店で、それぞれ会った。第一次トランプ政権は、北朝鮮に対して寧辺核関連施設のほか、平壌近郊のカンソンにあるウラン濃縮施設などの放棄を迫った。北朝鮮は寧辺核関連施設だけの放棄にこだわり、ハノイ会談で交渉は決裂した。

金正恩氏は25年9月の最高人民会議(国会)での演説で、「核は絶対に放棄しない」と断言。「米国が非核化の執念を捨てて現実を認め、我々との真の平和・共存を望むなら、我々も米国と対座しない理由はない」と語った。金正恩氏は同月、新型ICBM(大陸間弾道ミサイル)の開発状況の視察や核物質・核兵器生産協議会で「核能力高度化」を指示するなど、行動で「核保有」を既成事実化しようと躍起になっている。
これに対し、トランプ氏は25年1月の第2次政権発足以降、しばしば北朝鮮を「核保有国」と呼んでいる。第一次政権で北朝鮮問題を担当した米政府元高官は、「事実上の核の容認」もありうるとの見方を示す。元高官は「非核化には長い時間がかかる。最終的な非核化という目標だけ放棄しないことで、北朝鮮と折り合うかもしれない」と話す。ストックホルム平和研究所(SIPRI)によれば、25年1月時点で北朝鮮は約50発の核弾頭を保有している。韓国の鄭東泳統一相は25年9月、北朝鮮が高濃縮ウラン約2トンを保有しているとの見方を示した。核爆弾80~100発に相当する。金正恩氏が米国本土を攻撃できるICBMの開発を放棄しさえすれば、トランプ氏はディールに応じるだろう。
朝鮮国連軍はどうなる?
北朝鮮にとって25年は経済や国防の「5カ年計画」最終年にあたる。早ければ、26年の初めに5年ぶりに朝鮮労働党大会を開いて、計画の目標達成を祝うと同時に、新たな外交方針を発表するとみられる。一方、米国は26年秋に中間選挙を控えている。トランプ氏としてはそれまでに大きな政治的成果を挙げ、大統領職に加えて上下両院でも共和党が過半数を占める「トリプル・レッド」を維持したい思惑とみられる。このため、米朝首脳会談は26年春から夏にかけて行われる公算が高い。
米朝が北朝鮮の核と短中距離ミサイル放棄を長期的な目標として棚上げしてしまう場合、北朝鮮はインドやパキスタンのような「事実上の核保有国」としての地位を手に入れる。北朝鮮は「米朝間の懸案だった核・ミサイル問題は存在しない」と主張し、様々な要求を繰り出すだろう。その第一はトランプ氏も望むとみられる、朝鮮戦争の休戦協定の平和協定への転換だ。北朝鮮は「平和協定」を根拠に、朝鮮国連軍の解体や在韓米軍の撤退・縮小を求める可能性が高い。また、「北朝鮮の核・ミサイル問題の消滅」を理由に、様々な経済制裁の解除も求めるだろう。
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