CIAが“世界最強”を返上する日

大幅クビ切りで大混乱中

山田 敏弘 国際ジャーナリスト

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いま知っておくべき論点を、専門家がコンパクトに解説する「文藝春秋オピニオン 2026年の論点100」。この人気ムックの記事を「文藝春秋PLUS」でも紹介します。

 アメリカ第一主義を掲げて、世界各国に「関税戦争」を仕掛けるなど、対立構図を作って自国の有利にすべく動いてきたドナルド・トランプ大統領の第二次政権。国内でも個人的な恨みによる対立構図が顕在化している。トランプ大統領が目の敵にしているのが、インテリジェンス機関だ。スパイ活動を行うCIA(中央情報局)や、捜査権や逮捕権をもつ法執行機関であり情報機関でもあるFBI(連邦捜査局)、通信や衛星などを傍受する国防総省傘下のスパイ機関のNSA(米国家安全保障局)などが対象となる。

 トランプ大統領は、これらの組織内に自らを貶めようとする勢力があると度々主張してきた。そもそもトランプ大統領は、第一次政権から、CIAを軽視してきた。その理由はCIAが自分の粗探しをして、足を引っ張ろうとしている、と見ていたからだ。例えば、トランプ大統領が初当選した2016年の大統領選挙では、ロシアがトランプ大統領に有利になるようにオンラインなどで干渉したというスパイ機関の分析に激しく反発。その調査に関与したCIAやFBIを「ディープ・ステート(影の政府)」だと非難してきた。米政府内にいながらトランプ大統領を貶めようとしている勢力だとレッテルを貼ったのだ。

ドナルド・トランプ氏 ©NurPhoto via AFP

 さらにCIAやFBIなどが政治目的で「武器化」されてきたとも糾弾している。2024年の選挙戦でもアメリカに18あるスパイ機関などを指す「インテリジェンス・コミュニティ(IC)」全体が腐敗しており、関係者を一掃して刷新するという公約を掲げた。そして第二次政権になって、次々とそれを実行に移しているのである。

 まずトランプ大統領は、選挙戦でロシア疑惑など自身に対する捜査に携わったCIAとFBI、そして連邦レベルの検察を抱える司法省などの長官を次々と解任した。代わりに熱烈なトランプ支持者を指名している。NSAの長官と副局長も、まとめて25年の4月に解任。さらにスパイ機関の再編と効率化という名目で、新規採用の削減のみならず、早期退職を組み合わせて、CIAの職員数を数千人規模で削減することが明らかになっている。

 トランプ政権による圧力は現役世代にとどまらない。これまで自分に敵対的だった元長官など、元高官なども容赦なく標的にしているのだ。スパイ機関などで重要な役職にあった元高官らは、退職後も、政府の最高国家機密情報にアクセスできる「セキュリティ・クリアランス」を保持できる。それをウリにして民間企業のアドバイザーになり、多額の収入を得ているという実態がある。トランプ大統領はそこにも目をつけて、これまで自分に敵対的な活動をした元高官らからセキュリティ・クリアランスを剥奪した。

 もっとも、トランプ大統領のスパイ機関に対する不信感にも一理ある。というのも、一部の元高官らはトランプ大統領が大統領選で勝利することで安全保障が不確実性を増すと考え、あからさまな反トランプ活動を行ってきた。象徴的な例は、2020年の大統領選挙を前に、ジョー・バイデン大統領の次男であるハンター氏のノートパソコンに保存されていた電子メールや文書がリークされた件だ。バイデン氏が副大統領時代にその立場を利用して金銭的な利益を得ていたと指摘されたのだが、50人以上の元スパイ機関高官が連名で書簡を公開し、この話は、ロシアの偽情報工作の可能性が高いと指摘したのだ。

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source : ノンフィクション出版 2026年の論点

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