いま知っておくべき論点を、専門家がコンパクトに解説する「文藝春秋オピニオン 2026年の論点100」。この人気ムックの記事を「文藝春秋PLUS」でも紹介します。
この2、3年における日米同盟の最大のミッションは「台湾有事」の抑止であった。日米両政府は政策を整合させながら態勢構築と能力整備に注力してきた。
その一つが運用面(作戦面)で自衛隊と米軍がより効果的に連携、機能するための指揮統制の整備だ。日本側は統合作戦司令部を新たに設置し、米軍も在日米軍司令部を陸海空、宇宙・サイバーの領域を横断する統合運用が可能な形に再構成しようとしている。これにより日米双方の作戦時のカウンターパートが明確になり、また有事の際は時差があるハワイの上級司令部からの指揮を待たず、現場に近い出先の日本において作戦の調整ができ、連携のスピードと効率性が向上することが期待されている。
しかし弾薬やミサイルがなければ、そもそも日米の連携も作戦もままならなくなる。有事における対処能力を左右するのは継戦能力、つまり組織的な戦いを続けられる能力である。とりわけミサイルについては米軍が在庫不足や生産能力の伸び悩みに直面している中、日米で米国製の中距離空対空ミサイルAIM-120(AMRAAM)と米国製地対空ミサイルPAC3MSEを共同生産することが検討されている。日本でも生産をおこない、米国の生産能力不足を補う狙いがある。特にPAC3はウクライナへの供与で深刻な在庫不足が伝えられており、日本が生産を分担する意義は決して小さくない。
台湾有事においてもクリティカルな能力を担う兵器の生産をおこなうことで米国を補完することは「頼れるパートナー」として日本も抑止力の維持に責任ある役割を果たしていくことを意味している。
さらに今後は、先端技術の開発や応用においても米国を補完していくことで日米同盟を強固なものにできる。当然、それは日本の技術力や産業競争力の強化にもつながる。特に量子技術、衛星間光通信、海底ケーブル、造船などで日本は存在感を発揮できる余地がある。
指揮統制、ミサイルの共同生産などはこの数年間の日米同盟による取り組みのごく一部の代表例に過ぎないが、これらはいずれも実戦での作戦運用能力の強化に主眼を置いていることが共通している。
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