柳宗悦、濱田庄司らと、無名の職人の手による日用雑器や生活道具に“用の美”を見出す「民藝運動」を牽引。一方で、友人により出品された作品が1937年のパリ万博や57年のミラノ・トリエンナーレで最高賞を受賞するなど、世界でも高く評価された陶芸家・河井寛次郎(1890~1966)。孫であり記念館学芸員の鷺珠江氏が、幼少期にともに暮らした祖父の素顔を述懐する。

寛次郎は民藝運動に参加した頃から作品に自身の銘を入れなくなり、人間国宝や文化勲章への推挙も辞退したことで、「無位無冠の一陶工」と呼ばれます。ただ、決して孤高の人ではありませんでした。孫としてひと言で言うなら、あったかい人。孫を膝に乗せて可愛がるいわゆる好々爺とは違いますが、小さい私も尊重して見てくれるような存在でした。
幼い頃、寛次郎は私を見かけると、いつも2種類のうちどちらかの言葉をかけてくれました。一つは「今日は柿の種だね」。もう一つは「今日はメロンの種だね」。それ以上は何も言わなかったのですが、大人になって振り返ると、私が元気そうな時は柿の種、元気がなさそうな時はメロンの種だったんだなと思います。黒々と大きくて“命の凝縮”という感じがする柿の種と、青白くて小さく柔らかいメロンの種。孫を未来への可能性を持つ種に例えながら、でもメロンの種の日でも、「元気を出しなさい」「頑張りなさい」みたいなことは一切言わない人でした。
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