日本洋画壇の重鎮・中川一政(1893〜1991)は、書や陶芸でもその才能を発揮した。最晩年に深い親交のあった、能楽師で人間国宝の野村萬氏がその思い出を綴る。
中川先生にはじめてお目にかかったのは、美術商の萬葉洞さんのお宅で行われたお茶会でありました。
当時、私は国民的な人気ドラマ「おしん」に、陶芸家の役で出演が決まっていました。そこで、少しは陶芸家らしいことができなければ恥ずかしいと、大河内風船子(ふうせんし)先生が作陶をしておられた窯へ伺うことができ、「なかなか筋がいい」と褒めていただき、親しくされていた中川先生のお茶会にお連れいただくことになりました。
中川先生の印象は、まさに「軽妙洒脱」。この一言に尽きます。経験と年齢を重ね、ある境地を抜けて味わいを醸し出す。それを自然体でできてしまう先生はまさに「軽妙洒脱」そのものだと感じたのです。
例えばそれは、1989年に中川一政美術館が開館した時に、館内に設けられた茶室で行われたお茶会の招待状にもあらわれていました。
坂道の多い山の上に建つ美術館への案内に、「かねてから考へてゐた茶会を試ることにしました。(中略)ころばないやうおいで下さい」と書かれていて、先生のお人柄が垣間見え、思わず笑みがこぼれました。
2024年の春、娘に連れられて、久しぶりに神奈川県真鶴町の美術館を訪れ、懐かしく思い出しました。
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