昭和39(1964)年東京オリンピックのシンボルマークやNTTのロゴマークなどを手掛け、日本にグラフィックデザインを根付かせた亀倉雄策(1915〜1997)。社会学者の加島卓氏がデザインの背後にあった苦労を偲ぶ。
TOKYO 1964という文字の上に、大きな赤い円と金色の五輪。亀倉雄策は東京オリンピックのマークやポスターを作った日本を代表するデザイナーで、「昭和のグラフィックデザインをつくった男」と呼ばれている。
亀倉はデザインのなかでもシンボルマークを重視した。広く知られているのは、NTTのシンボルマークである。シンプルで力強く、それでいて簡単には思いつかないデザインに見えるところが印象的である。
亀倉のデザインは複雑なことをしない。その多くが、直線と曲線で構成されている。こうした特徴はモダンデザインと呼ばれ、言語や国境を越えて誰でも見てわかる合理的なデザインを目指している。
そのためか、デザインの素人であるクライアントからの評判も良い。私家版の追悼文集にはリクルートの創業者・江副浩正、ダイエーの創業者・中内㓛、第79代内閣総理大臣・細川護熙といった名前が並ぶ。亀倉はデザインの最終的な決定権を持ったクライアントのトップと渡り合える稀有なデザイナーだったのだ。
NHKではドラマになり(『オリンピックをデザインした男たち』や『いだてん』)、評伝も書かれている(『TOKYOオリンピック物語』や『朱の記憶』)。しかし、こうしたノンフィクションは成功譚になりやすいので、ここでは亀倉が悩み苦労した点を紹介したい。
私が興味深いと思うのは、亀倉がモダンデザインを通して日本と西洋の関係を考えるようになった点である。昭和29(1954)年に渡米した亀倉はニューヨークで面会したデザイナー(レオ・レオーニ)と次のようなやりとりをしている。
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