「彼女が大事にしたテーマがすべて詰まっている」(平松)
「こんな小説を書くのが私の夢です」(原田)
高度成長期を舞台に、砧青磁(きぬたせいじ)の壺がたどる数奇な運命を描いた、有吉佐和子さん(1931-1984)の小説『青い壺』。本誌1976年1月号(立花隆さんの『日本共産党の研究』が特集記事だった)から1977年2月号に連載された。定年後の夫との折り合いや、遺産争い、女学校の同窓会旅行そしてスペイン出身の修道女の帰郷といった、そのときどきの持ち主のエピソードを描く13編の連作短編集で、2011年に平松洋子さんの文庫解説をつけた新装版が復刊されると口コミで評判が伝わり、この半年で17万部、累計50万部超のベストセラーとなっている。
“再ブーム”の大きなきっかけは、ベストセラー『三千円の使いかた』や『財布は踊る』の作家・原田ひ香さんの推薦帯〈こんな小説を書くのが私の夢です〉だった。
平松 売り上げ爆発のきっかけは、原田さんの帯の力ですね。
原田 ありがたいことに、書店店頭では私の本と『青い壺』が隣り合わせに置かれているようで……もともと私の本を買ってくださっているのは40代〜60代以上の女性らしく、『悪女について』とか『恍惚の人』みたいな有名作品は読んでたけど、『青い壺』は知らなかった、じゃあ読んでみようか、という方が多かったのかなと。
平松 有吉さんが53歳という若さで亡くなったのは1984年。そこから考えると、今の40代、50代には読まれてなかったのでは? 原田さんの読者の年代にとって、有吉佐和子は、著名な作家で名前は知っているけれども、同時代の作家の作品として読んだことは実はなく、気になっていたけれどとっかかりがないという“モヤモヤした存在”だったと思うんです。大ベストセラーが出ていた当時の読者とは違う、いわば“ズレ”が逆転して、いまこんなに読まれているのではないかと。
原田 新聞広告の効果も大きいです。担当者によると「広告出すたびに面白いくらい売れる」と。私の『三千円の使いかた』も新聞広告が効いた本なので、『青い壺』と相性が良かったんだと思います。
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