『料理と人生』マリーズ・コンデ著、大辻都訳/左右社
『ピュウ』キャサリン・レイシー著、井上里訳/岩波書店
『穏やかなゴースト 画家・中園孔二を追って』村岡俊也/新潮社
〈記憶の語り〉が〈言葉〉に置き換わるとき、何が生まれるのだろう。『料理と人生』を読み終えてからずっと考えている。本書は、2018年、ノーベル文学賞に替わるニュー・アカデミー賞を受賞した作家マリーズ・コンデの自伝的回想録。カリブ海のフランス領グアドループに生まれ、10代半ばで移住したフランス本土、結婚を機に住んだ西アフリカ、コロンビア大学で教鞭を執るために渡ったアメリカ……黒人作家のアイデンティティに多様な異文化が絡む。少女期から情熱を滾らせてきた料理を基軸に、90年近い人生の起伏が語られるのだが、口述筆記を担ったのは長年コンデの作品を翻訳してきたイギリス人の夫。記憶を辿り、語り、聞き、言葉を紡ぐ両者の関係を通じ、独自の“料理と人生”が浮かび上がる。かつて、“料理と文学を同一に捉えるのは雑巾と布巾をいっしょにする行為”だと非難したのは母。祖母は、グアドループの白人家庭で働く腕利きの料理人だった。
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source : 文藝春秋 2024年1月号