伊東正義 「うん」と言えば総理になれた男

泉 宣道 元日経新聞専務執行役員

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 “総理のイスを蹴った男”の異名を持ち、クリーンな政治姿勢を貫いた元外相の伊東正義(1913〜1994)。政治部記者時代、伊東を担当した元日経新聞専務執行役員の泉宣道氏がその横顔を振り返る。

“総理のイスを蹴った男”の異名を持つ伊東正義氏 Ⓒ文藝春秋

「日本の政治家にはいろいろお会いしているが、あなたとの面会が一番多い。私たちは本当に心を打ち明けられる友人です」

 1988年4月19日、北京の人民大会堂。中国の最高実力者、鄧小平共産党中央軍事委員会主席は竹下登首相の特使として訪中した伊東正義自民党総務会長にこう語りかけた。

 当時、伊東氏74歳、鄧氏83歳。両氏の会談は6回目だった。日本からの同行記者団の一員として筆者もその場にいた。一眼レフで撮影した写真が今も手元にある。横並びの椅子で語り合う表情から「老朋友」同士の深い絆が伝わってくる。

 伊東氏ほど中国の要人たちと深厚な関係を築いた日本の政治家はいなかったのではないか。

 伊東氏は福島県会津若松市生まれ。会津藩士の子孫として「ならぬものはならぬ」の精神を心に刻み、自らの信念に基づいて人生を歩んだ。

 頑固一徹の伊東氏の無二の親友は、大平正芳元首相だった。生臭い政界にあって、2人の「まさよし」の清々しい友情は語り草になっている。

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source : 文藝春秋 2026年11月号

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