「ふるさと納税争奪戦」が地方をつぶす

大西 康之 ジャーナリスト
ニュース 政治 経済
豊富な返礼品と節税効果で人気のふるさと納税。だが今、その存在が揺らいでいる。寄付額は増加の一途をたどる一方で、「宅配クライシス」で返礼品が送れないのだ。その実態とは?

ソフトクリームだけで1億5000万円超

 いま、「ふるさと納税」が揺らいでいる。2008年の制度開始以来、寄付額は増加を続け、2018年度には5100億円の寄付金が集まる巨大市場となった。努力次第で、人口わずか2000人程度の町であっても1億円単位の寄付金を集めることができるのがこの制度の面白いところ。ふるさと納税が地方経済を活性化させていることは間違いない。

 その一方で、寄付額の増加に伴って返礼品の発送量が増えたことで、悲鳴を上げる自治体も出てきた。その背景にあるのは、「宅配クライシス」による配送料の高騰である。いま現場では何が起きているのか。ふるさと納税の光と影を追った。

 4000人弱の人口に、1万6000頭の乳牛――稚内空港から車で40分の距離にある北海道・豊富町は、人より牛が多く住む酪農の町だ。

 2014年4月、豊富町役場総務課にひとりの職員が異動してきた。町役場きってのアイデアマン、能登屋将宏(現建設課課長)だ。異動早々、能登屋は黎明期だったふるさと納税の拡大にチャレンジすることを決めた。異動してきた当初は、ファックスと電子メールを使った手作業だけの募集で、前年度の寄付金はわずか220万円だった。

 その年の10月、能登屋は日本最大級のふるさと納税仲介サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクと協力し、本格的にインターネットを使ったPRを始める。その一方で、町内の飲食店、旅館、食品加工会社に足しげく通い、目玉になりそうな返礼品を探した。

 そこで出合ったのが、地元の酪農家が経営するカフェ「フェルム」のソフトクリームである。新鮮な牛乳を飲んでいるような濃厚な味わいが魅力だ。

「これをカップに詰めて返礼品にしたら喜ばれるんじゃないか」

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source : 文藝春秋 2020年4月号

genre : ニュース 政治 経済