小沢一郎と共に菅政権を倒す

野党共闘「政権再交代」に勝算あり

中村 喜四郎 衆議院議員
ニュース 政治
野党が結束して政権交代を成し遂げるにはどうすればいいのか。「無敗の男」が語った秘策とは

<この記事のポイント>

●今の日本は民主国家といえるのか。安倍政権、菅政権は「心を縛り、国民に諦めさせる政治」に他ならない
●小沢一郎氏との因縁は過去のこと。「四野党がまとまって選挙で勝とう」という意識は共有できる
●次の選挙で野党は有権者に「もう一度だけ選挙に行ってくれ」と本気で訴えなければならない
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中村氏

自民党に大人のふるまいは期待できない

 9月15日、野党第一党の立憲民主党が新たなスタートを切りました。旧立憲と旧国民民主党、無所属などの議員150人(衆院107人、参院43人)が合流し、私も名前を連ねています。日本再建に向けて汗をかきたいと合流を決めました。

 翌16日、衆議院本会議で首相指名選挙が行われ、自民党の菅義偉氏が314票を獲得し、総理大臣の座に就きました。7年8カ月つづいた安倍政権、そして現在の菅政権は、私から言わせれば、「心を縛り、国民に諦めさせる政治」に他なりません。菅政権は、党総裁選の経緯から大きな問題を孕んでいます。今回、総裁選は党員・党友も投票する通常の総裁選ではなく、投票を国会議員と県連の代表者に限定する簡易型で実施されました。

 たしかに自民党の党則で「総裁が任期中に欠け、特に緊急を要するときは、党大会に代わる両院議員総会で後任を選ぶことができる」と決められており、二階俊博幹事長は「政治空白は一刻も許されない」と説明しましたが、詭弁でしょう。「簡易型」が選ばれたのは、党員・党友からの人気が高い石破茂氏を潰すためだったのは明らかです。そもそも自民党は、臨時国会を開くべきだという野党の召集要求を拒み、国会を約3カ月も閉じていた。いまさら「政治空白」が生じようはありません。自民党執行部が小細工を施した選挙で日本のトップが決められ、これで本当に民主国家といえるのでしょうか。どこか別の国の選挙を見ているようです。

 さらに菅総理の支持率が高いことをいいことに、自民党から総選挙の早期実施を求める声も上がっていますが、そこでは誰も「政治空白」に言及しない。甚だしい矛盾です。こうした自民党政権の政治姿勢が国民を呆れさせているのです。

 かつての自民党は、田中角栄首相が金脈問題で退陣すると、真逆のクリーンなイメージの三木武夫首相が出てくるなど、絶妙なバランス感覚があった。国民の批判に対し、低姿勢で耳を傾けるなど、責任政党としての重みがありました。今の自民党にそうした大人の政党のふるまいは期待できません。

 このような歪な経緯で誕生した菅政権ですが、首相指名選挙では衆議院で134名の議員が「枝野幸男」と書いた。立憲107人の衆院議員に加え、共産、国民民主、社民党の議員が枝野氏に票を投じた。とりわけ共産党が他党の党首を指名するのは実に22年ぶりだそうです(決選投票を除く)。「内輪揉めばかり」「安倍一強の最大の功労者」などと言われ続けた野党四党がようやく連携できた。この結果に、私は大きな手ごたえを感じています。

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枝野幸男氏

 私は1994年にゼネコン汚職事件で逮捕され、自民党を離党しています。有罪確定で失職しましたが、刑期満了後に再び当選。茨城7区の熱心な有権者に応援していただいたおかげで、一度も落選することなく、当選回数は14回を数えます。

 離党後も自民党と縁が切れることはなく、もちろん愛着もある。民主党政権時代には自民党と院内会派を組みましたし、二階派に客員会員として属しました。何度か「自民党に戻れ」と要職についた方から誘われたこともあります。

飲み会で「野党結集」

 そんな私がなぜ立憲民主党に加わる決断を下したのか。それは自民党がすっかり変わり果ててしまったからです。私が戻りたいと思える党ではなくなった。そして暴走する自民党に対抗できる力を野党につけたいと考えるに至りました。そんな思いに突き動かされ、この2年弱の間、四野党結集に向け、水面下で汗をかいてきました。

 まず野党四党の距離を縮めるため、計10回ほど会合を主催しました。ホテルのレストランや料理屋でお酒を飲みながら話す。いわゆる飲み会ですね。四野党の代表、枝野さんをはじめ国民民主党の玉木雄一郎さん、共産党の志位和夫さん、そして社民党の福島瑞穂さんとの会合を4、5回開きました。

 私が「〇月〇日は空いてませんか」とそれぞれの事務所とスケジュール調整し、飲み会当日、私は下座で司会をするのです。

 最初は皆、警戒して口が重いのですが、酒が回ってくると、徐々に話が弾み、政局の話も飛び出す。2時間以上経てば、すっかり気分が良くなって「こういう機会もたまにはいいな」と思うようになるんです。こうした会合を大体3カ月に1度のペースで開いてきました。

 党代表クラスの会合と並行し、幹事長クラスで2回、政調会長で2回、選対委員長クラスも集めました。トップだけで物事を決めても、どうしても党内から「俺たちは聞いていない」という不満が出る。だから同時進行で様々なレベルの議員に声をかけたのです。こうした会合を続けると、他党との距離がどんどん縮まっていく。「一緒に戦う」という仲間意識が芽生え、野党同士で揉めている場合じゃないという空気が出てくる。飲み会の効果は馬鹿にできません。

 野党の議員は、自分たちで集まってばかりで、他党の人間と酒を飲もうとしない。私の想像ですが、野党の議員は頭を下げるのが嫌いな人ばかりです。まずどちらが誘うか、誰がお金を払うかを気にする。自民党の場合、他党議員を誘うのも、お金も出すのも自民党。だから野党議員も抵抗なく足を運ぶのですが、野党同士だと、そう簡単にいかない。

 杯を重ね、日本の将来を語り合うことが選挙協力に繋がっていった。「酒を飲むだけ飲んで一緒に戦わないのもおかしい」となり、18年6月の新潟県知事選を皮切りに、埼玉、高知、東京の知事選を、野党で共闘しました。結果は「1勝3敗」。しかし各党とも手ごたえを感じているはずです。高知では共産党系候補に他党が乗るなど、これまであり得なかった展開が見られました。

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©iStock

小沢一郎氏との“邂逅”

 選挙協力のなかで新たな運動も生まれました。「投票率10%アップを目指す108万人国民運動」のことです。今年4月の静岡の衆院補欠選挙で、野党はまとまれず統一候補が敗れてしまった。その反省を生かすため、私は、「せっかく応援してもらったのに負けて申し訳ない」と、野党の議員を訪ね歩いた。前向きに反省会をしようと呼びかけ、6月末から始まったのが「投票率アップ」を呼びかける署名活動です。

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source : 文藝春秋 2020年11月号

genre : ニュース 政治