文在寅政権は我が韓国の「信用」を失った

徴用工判決、慰安婦財団解散……元駐日大使の憂国の弁

柳 興洙 元駐日大韓民国大使
黒田 勝弘 神田外語大学客員教授・産経新聞ソウル駐在客員論説委員
ニュース 政治 国際 韓国・北朝鮮
朴槿恵氏(左)と文在寅氏(右) ©時事通信

 黒田 今、日韓関係はここ数年で一番冷え込んでしまっていると言ってよいかもしれません。

 10月30日、韓国の大法院(最高裁判所)は、「第二次大戦中に日本企業に徴用されて強制労働させられた」とする韓国人男性が新日鉄住金(当時・日本製鉄)に損害賠償を求めた訴訟の差し戻し上告審で、訴えを認める判決を下しました。11月29日には三菱重工業に対する判決も言い渡されました。いわゆる「徴用工問題」では長年、日韓両政府は「1965年の日韓請求権協定で解決済み」という立場を取ってきたにもかかわらず、です。また、11月21日、韓国政府は、2015年の「日韓慰安婦合意」に基づく元慰安婦支援の「和解・癒やし財団」の解散も一方的に発表しました。

 日本の世論は「韓国は国と国との約束を守れないのか」と相当、反発しています。そこで、“知日派”として知られ、日韓慰安婦合意の時に駐日大使をされていた柳さんのお話を聞こうと思ったわけです。

 柳 直近のこういった出来事が韓日関係を悪化させているのは間違いありません。また日本人が「韓国がやっていることはおかしい」と考えるのもよく分かります。

 私の愛読書に、アメリカの生物地理学者ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』があります。あらゆる研究分野の知を結集して人類史の謎に迫ったベストセラーです。

 その本の中に、次の一節があります。〈韓国人と日本人は成長期を共にすごした双子の兄弟も同然だ〉。私も心からそう思います。韓日両国は本来、互いを兄弟だと認め合い、協力して生きていかなければならない存在なのです。しかし今、私たちはそれとは真逆の方向に歩いて行こうとしている。とても悲しいことです。

 柳興洙(ユフンス)氏(81)は、韓国有数の“知日派政治家”である。
 韓国南東部の慶尚南道・陜川生まれで2歳の時に家族と共に渡日し、少年期を京都で過ごした。1949年、小学校5年の時に帰国。1962年にソウル大学を卒業後、内務省(現・行政安全部)に入り、治安本部長(警察庁長官)、忠清南道知事、全斗煥政権の政務首席秘書官等を歴任した。1985年に国会議員に初当選。2004年の政界引退まで国会議員を4期務め、日本語は完璧で韓日議員連盟幹事長に就くなど日韓交流に尽力した。落選期間中の1989年には京都大学に1年間留学し、ロシア思想史研究の大家・勝田吉太郎教授に師事した。
 2014年から2年間、朴槿恵政権下で日本に豊富な人脈を持つ人物として駐日韓国大使に起用された。日韓国交正常化50周年となる2015年の「日韓慰安婦合意」に舞台裏でかかわった。

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source : 文藝春秋 2019年1月号

genre : ニュース 政治 国際 韓国・北朝鮮