「とにかく成長のスイッチを、押して、押して、押して、押して、押しまくってまいります」
2月20日、勝負服の濃紺のスーツに身を包み、衆議院本会議場で施政方針演説に臨んだ首相の高市早苗は、サポーターをした右手で演台を叩きながら、声に力を込めた。すると議場の4分の3を占める与党席から拍手がわき起こり、演説終了時にも10秒以上の拍手が続いた。
先の衆院選で高市自民党は、戦後初めて単独政党が3分の2超の議席を獲得する歴史的圧勝を収めた。昨年10月の所信表明演説では、野党のヤジ攻勢で演説を一時中断する場面もあったが、風景は一変した。
衆院選で得た「民意」を追い風にして、責任ある積極財政、力強い外交・安全保障、インテリジェンス機能の強化、憲法改正の国会発議への意欲など、“高市カラー”を前面に押し出した。なかでも、経済成長のカギとなる「投資」という言葉を24回も使った。

積極財政を推進するにあたり、気になるのはマーケットの動向だ。さすがの高市も、最近は日経新聞を熟読しているようで、演説でも「野放図な財政政策をとるわけではない」と予防線を張り、財政の持続可能性を重視する姿勢も見せた。
勢いづく高市政権だが、参議院では少数与党のまま。衆院に続いて行われた参院の演説で、高市が憲法改正に関連して「どのような国を創り上げたいのか、その理想の姿を物語るものが憲法です」と意気込むや、「違う! 違う!」と大声のヤジが参院本会議場にこだました。
参院での少数与党のみならず、史上最大勢力を擁する高市政権の行く手には、実は至る所に“落とし穴”が潜んでいる。
衆院選での勝利を確信した1月下旬から、高市は麻生太郎自民党副総裁に衆院議長就任を繰り返し打診した。この人事は、安倍晋三政権で首相補佐官兼政務秘書官を務めた今井尚哉内閣官房参与の発案とされる。
「麻生を衆院議長に」の狙い
安定的な皇位継承に向けた皇室典範改正と、党是とする憲法改正に向けて「実力議長」が望ましいというのが表向きの理由だ。ただ、これまで三権の長である首相と衆院議長の両方を務めたのは、幣原喜重郎だけ。幣原の首相就任は大日本帝国憲法下の大命降下によるものであり、現行憲法下で首相と議長に就任した例はない。
真の狙いは、麻生を“封じ込める”ためだ。麻生は党内で唯一残る派閥を率いており、消費税減税にも慎重な態度を崩さない。そもそも衆院解散にあたって、高市は解散の記者会見当日まで、麻生には直接は伝えていなかった。
麻生も高市サイドの狙いは百も承知だ。打診にまんざらでもない表情を浮かべる場面もあったが、衆院選投開票翌日の2月9日、党本部で高市と向き合い、「ありがたい申し出だが、お断りする。300議席以上となり党内に目配りする必要がある」と固辞した。代わりに、麻生派事務総長の森英介元法相を推薦し、高市も受け入れざるをえなかった。
“高市人事”の矛先は、衆院議院運営委員長の浜田靖一、党国会対策委員長の梶山弘志の首にも向けられた。
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