「トランプ関税」が不可避だった理由

第1回

マット・ポッティンジャー 元米大統領副補佐官・ガルノーグローバル共同創業者CEO
ニュース 政治 経済 国際 中国

「トランプ関税」の導入のスピードと規模は、米国内はもちろん、世界中の人々にとって大きな衝撃でした。しかし、私にとっては驚きではありませんでした。

 私は、第一次トランプ政権時にホワイトハウスの副補佐官としてトランプ氏に仕えていて、その間、彼が実際に導入できた関税より、「さらに多くの関税」「さらに高率の関税」を求めていた姿を何度も目にしていたからです。現在2期目に入り、以前から望んでいた高関税の実現に向けて、さらに動きを強めています。

ポッティンジャー氏 ©文藝春秋

 そもそもトランプ氏は、関税を通じて何を達成しようとしているのか。ウォルマートをはじめ米国の国内企業が関税による品不足やインフレのリスクを警告するなかで、高関税品目に関して、今後、関税率の引き下げの可能性はあるのか。その点を考察していきたいと思います。

三つの「R」

 トランプ氏は「R」で始まる言葉を好む傾向があります。彼が頻繁に口にする三つの「R」は、彼の世界観や関税政策を理解する上でとくに重要です。

 第一の「R」は「相互主義(Reciprocity)」です。

 これはトランプ版の“黄金律”とも言える考え方です。本来、黄金律(新約聖書マタイ伝)とは「自分がしてもらいたいように他人に接するべきだ」というものですが、トランプ氏の解釈はやや異なります。彼は、相手国が米国をどう扱っているかに応じて、貿易や安全保障の面で扱い方を変えるべきだと考えています。

 トランプ政権は、こうした考えに基づいて「相互関税」の導入を進めています。4月初めの発表より関税率は低くなる可能性はあるものの、対象国との交渉の進展次第では実際に適用されるかもしれません。

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source : 文藝春秋 2025年7月号

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