貿易戦争「中国優勢」は間違い

特集 病んだ米欧から自立せよ

高口 康太 ジャーナリスト
ニュース 社会 経済 国際

トランプ関税は中国の急所をおさえた

 トランプ新政権の発足とともに、米中の貿易戦争が始まった。両国が報復として関税を引き上げあった結果、米国の対中追加関税(既存の関税への上乗せ)は一時、145%に、中国の対米追加関税は125%に達する異常事態となった。

 その後の米中ハイレベル経済貿易協議によって、米国の対中関税は54%にまで引き下げられた(うち24%は90日間の一時停止のため、現状は30%)。100%超えの異常値から下がったとはいえ、きわめて高水準であることには違いない。

 また、合意発表翌日にトランプ政権は新たな半導体規制を発表したが、その内容がすさまじい。中国通信基地局・端末大手ファーウェイが中国国内で製造したAI(人工知能)半導体を使用した企業は、輸出管理規制違反に問われる可能性がある。中国企業が作った製品を中国企業が使用しても、米国の輸出管理規制違反になるという、ゴリおしの規制だ。

 さらに中国船籍や中国で建造された船舶に対する米国寄港手数料徴収、米株式市場での中国企業株上場廃止の噂もある。

 米中の貿易戦争は収まるどころか、きな臭さを増すばかりなのだ。この戦いはいかなる結末を迎えるのか。今のところ中国優位を唱える論者、メディアが多い。関税による物価上昇でトランプ政権の支持率は低下する、米国は中国製品に依存しきっているので脱中国は簡単ではない、賃金が高い米国に製造業を呼び戻すことは不可能、そもそも製造業で働くエンジニアが米国にはいないではないか……。貿易戦争が長期化すると、先に音を上げるのは米国だというわけだ。

 こうした見立ては米国だけを見た一方的なもので、中国の内情と弱みを理解していない。トランプ関税は中国の急所を捉えた。中国は間違いなく苦しんでいる。語られることの少ない中国から見た米中貿易戦争を読み解いていきたい。

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source : 文藝春秋 2025年7月号

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