国家主席のレガシーが“負動産地獄”に
中国経済がきな臭い。
若年層の失業率が20%を超えた、地方政府の隠れ債務は1100兆円を突破、物価低迷でデフレ基調に……中国経済はネガティブなニュースが大半だ。いったい、何が起きているのか? 中国で感じた現状をリポートしたい。
足元のふらつき、その最大の要因はコロナ対策の後遺症だ。昨年12月に厳格なゼロコロナ対策を断念し、その後1カ月あまりの間に、推定で11億人以上が一気に感染するという荒療治に打って出た。昨年10月以降の火葬遺体数を非公表にするなど、その死者数について触れることはタブーとなっている。
中国政府はポストコロナの経済V字回復という成果をもって批判を封じ込める……はずだった。実際、街を歩くと、コロナから解放された人々の浮かれたムードが感じられる。今年5月、メーデー休暇まっただ中の中国を訪問したが、観光地やレストランは大にぎわいだった。政府発表によると、メーデーの旅行客数はのべ2億7400万人と史上最多を更新している。ただし、旅行消費は人数ほどには増えていない。節約志向が強く、近距離旅行が増えた結果だという。また、外食には金を使っても、自動車や大型家電のような耐久消費財は買い控え傾向が強く、景気回復が本格化しない。
がらんどうのビル
表向きの浮かれムードとはうらはらに、経済への打撃はボディーブローのように内臓をむしばんでいる。その象徴として注目されるのが大都市の人口。中国四大都市(北京市、上海市、広州市、深圳市)の人口は2022年、約27万人の減少となった。稼ぎ口が見つからない出稼ぎ農民が帰郷したことが主因だ。雇用の減少は製造業、サービス業の低迷を示している。
5月、上海市にある七浦路服飾商業街を訪れた。華東地方最大の衣料品卸売市場だ。10棟以上はあるビルに小さなショップがぎっしりと詰まっている。中国紙・文匯報によると、2018年時点で6500以上ものショップがひしめき、日に200~300トンもの衣料品を出荷していたという。
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source : 文藝春秋 2023年8月号