統一教会による“日本占領計画”
韓国における統一教会(現・世界平和統一家庭連合)への捜査で押収された内部文書「TM(トゥルーマザー)特別報告」(原本は韓国語)は、自民党議員との癒着ぶりを改めて浮き彫りにした。議員たちが統一教会に近づく目的が、選挙の応援という実利にあったことも裏付けられた。
では、統一教会が政治家に近づく目的は何か?
文書をつぶさに読むと、「国会議員を教育する」という文言の頻出に気づく。それは、国会議員や総理大臣に統一原理を講義して教育し、信者に仕立て上げる⇒信者の国会議員団を組織し、韓鶴子総裁を国賓として日本に招く⇒天皇制を廃止し、全ての国民が韓総裁にかしずく国家体制を築く、という計画だ。公開を前提としない文書だからこそ、彼らの本当の狙いが明かされているといえよう。
TM特別報告の作成者は、韓国の教団本部でナンバー2の地位にあった元世界宣教本部長のユン・ヨンホ氏だ。ユン氏には、世界各地の教団から集まる連絡を取りまとめ、「トゥルーマザー(真のお母様)」こと韓総裁に報告する任務があった。報告は毎朝5時から8時まで、3時間かけて行なわれたという。その記録が「TM特別報告」で、2016年から22年の連絡事項がA4で3,212ページにわたって記載されている。
日本からの報告では、国政選挙や自民党総裁選の情勢分析、安倍晋三元首相や萩生田光一衆院議員をはじめとする個々の議員との交流が細かく綴られる。主な報告者は、教団の会長を務めていた徳野英治氏と、天宙平和連合(UPF)ジャパンの議長だった梶栗正義氏の2人だ。
彼らの報告から、統一教会による“日本占領計画”を読み解く。

国会議員への布教をめざす
2019(令和元)年7月6日の梶栗氏の報告は、政治家に接近する目的と、長年の政界工作による浸透具合を細かく語っている。
〈お母様、日本は最近、皇室の世代交代がありました。私はその過程を見守りながら、日本という国の形態について深く考えるようになりました。(略)
国会議員はそれぞれ数十万票の有権者の信任を背景に議席を持ちます。私たちが日本に天一国を安着させるには、安倍首相や天皇陛下個人が私たちを受け入れるからといって国が動くのではなく、彼らがそうできるように国民世論を背景に議員たちを動かさなければならないことを改めて考えさせられたのです。
現在、日本統一運動の各現場で縁を結び、挨拶を交わすことができる国会議員は216名に上ります。そのうち、私が会いたい時に会える国会議員は30名程度です。その中の数名は2日修練まで受けましたが、まだ祝福家庭にはなっていません。過去には3日行事まで終えた祝福家庭の国会議員がいましたが、その間に皆高齢となり聖和(筆者注・死去のこと)されました。
今後はより多くの国会議員を平和大使に任命し、平和大使理念として原理教育を実施し、平和大使運動に参加させる中で、平和の主人として祝福家庭にならなければならない当為性を強調し、教育していこうと思います〉
ここで梶栗氏の言う〈挨拶を交わすことができる国会議員は216名〉〈私が会いたい時に会える国会議員は30名程度〉の実態は不明だ。
〈祝福家庭〉とは、統一教会の「祝福結婚」によって結ばれた信者夫婦の家庭のこと。安倍氏や天皇陛下が信者になったとしても不十分で、国民世論を背景に国会議員を動かすことこそ大事だ。そのために〈原理教育を実施し〉、信者として〈教育していこう〉と言っている。

信者議員を地方に養成、配偶者との関係も配慮
梶栗氏の報告は、こう続く。
〈そして、私が10年以上近くにいた年齢の近い同世代の国会議員たちが、その間に当選を重ねて5選・6選議員へと成長しました。衆議院6選であれば、内閣編成時にいつでも大臣として任命され得る立場であるため、その点を意識して縁を大切にし、交流を続けています。お母様がよく覚えていらっしゃる山際(筆者注・大志郎)衆議院議員も、今や自民党幹部の一人となり、重責を担って活躍しています。
このように縁を結んで教育してきた議員たちを祝福へとつなげるには、議員本人だけでなく配偶者との関係も重要であるため、最近は私の妻も共に議員たちと積極的に交流しています。
お母様、日本にも数多くの宗教がありますが、政教分離を意識して政治とは距離を置く宗教もあれば、一方で積極的に政治的影響力を行使する宗教もあります。創価学会は彼らなりの国家復帰の概念を持っており、自分たちの宗教的な信念を国家に反映させようと、お母様もよくご存知の公明党という政党を作り、半世紀近くその勢力を育ててきましたが、現在は自民党と共に連立与党の一角を担い、権力を行使しています。
現在、彼らは54名の国会議員と約3000名の地方議員を抱えています。日本の地方議員の総数が3200名(筆者注・32000名の誤りか)程度であるため、地方議員11名に1人は公明党議員、すなわち創価学会員であると言えます。一般的に創価学会の会員数は800万世帯と言われており、国政選挙のたびに彼らは700万票を左右すると言います。彼らがそれほどまでに政治的影響力を育てるには半世紀かかりました。
私たちもこれまで食口(筆者注・信者のこと)地方議員を育ててきて、現在までに59名の食口地方議員を当選させました。また今年末までに外部の平和大使地方議員を教育して祝福を捧げることで、300名の食口地方議員基盤を作りたいと考えています〉
統一原理を教育して信者にしようと目論む国会議員の場合と違い、梶栗氏が59人いると言う地方議員は、元からの信者が立候補して議席を得るケースが多い。また、国会議員の配偶者にも教育を施すことで信仰を広め、政教分離の原則を越えて創価学会を凌駕する勢力を目指すと書いているのだ。
梶栗氏は2018年6月27日の報告でも、
〈国会議員をはじめとする議員教育に力を注いでいます。落選議員や元議員には随時各地で原理教育を実施しており、現職国会議員には国会の休会中に議員が原理研修を受けるよう約束を取り付ける活動を展開しています。
そして国会の会期中には、これまで私たちが接触できる国会議員60名のリストを作成し、継続的に議員に会ってお母様の世界的な活動とIAPPについて紹介し、より深い信頼関係を構築することに努めてまいりました〉
としている。IAPPとは、統一教会の関連団体のひとつ「世界平和国会議員連合」のことで、日本支部は梶栗氏が顧問を務めていた。
韓鶴子訪日の「国賓プラン」
2020年6月1日の梶栗氏の報告は、具体的なプランを明かしている。
〈どうすれば真のお母様を日本の国賓としてお迎えできるか、様々なチャンネルを通じて調べ研究してみましたが、国家元首でなければ国賓という名目で日本にお迎えすることはできないという厳然たる事実の前に、多くの悩みを抱えることになりました。
ところが、1992年に入管法上の困難があったにもかかわらず、お父様(筆者注・文鮮明教祖のこと)が日本に14年ぶりに入国できた経緯に注目し、一つのヒントを得ました。当時は日本の副総理を歴任した政界の実力者である金丸信自民党副総裁を中心に、50名の現職国会議員の連名で真のご父母様両位を正式に日本に招待し、み言葉を伺う場を実現させていました。
そこで私は、平和大使に任命され、み言葉教育まで受けた現職の国会議員たちを核心役員として、日本国会の中にIAPP摂理に対応する『IAPP議員懇談会』を組織し、議員たちがより強い帰属意識を持って共に摂理に参加できる会を強化し、この議員連盟の名前でお母様を正式に日本に招待できる道を作ろうと思います〉

さらにその先にある目標を、徳野氏が明かしている(2021年10月6日)。
〈真のお母様が最近、韓国の5000年の歴史の中で真の父母を受け入れ、真の父母に侍ることができる韓国となるために、摂理的な現象として韓国の王朝の歴史が終焉し、民主主義の国家体制に至ったという趣旨のお話をされました。
その趣旨とも繋がりますが、長期的な視点で見れば、日本国民が真の父母様に侍ることのできる日本国民となるためには、当然ながら天皇制は将来的に撤廃されるべきです。
したがって、今回の女性皇族の結婚問題を通じ、英国の皇室がそうであったように、少しずつ、少しずつその伝統が崩れていることも、摂理的な現象かもしれないという印象を持ちました。
いずれにせよ、実権は持っていないとしても、国民の象徴として天皇が存在し、天皇制度というものが一つの存在感を持ち、日本国民の心に精神的な影響を与えていることは事実です。
より自然な形式で天皇制が撤廃される方向へと進み、そしていつか日本国民が真の父母様に正しく侍ることのできる国家体制、そしてそのような日本民族を真の父母様に繋げることのできる摂理的な人物として、多くの国会議員が誕生し、二世をはじめとする食口が国会議員となり、そしてついには、この日本国の首相にならなければならないということを切実に考えている次第です〉

徳野氏は1月8日、TM特別報告について自身のXに、
〈私が韓総裁に報告するために元世界本部長に送った報告が含まれているのは事実です〉
〈信仰的希望を込めて、韓鶴子総裁を励ますことを目的として書いた極めて私的なものです。日本本部としての公式文書というよりは、私信に近いものです。そのため、個人的意見や希望的予測なども多く含まれています〉
と投稿した。

上の報告で触れている「女性皇族の結婚問題」は、秋篠宮家から一般人の小室圭さんに降嫁した〈眞子内親王の結婚問題と皇室制度との関係性についての、私自身の見解〉と断わっているが、ゆくゆくは天皇制を撤廃し、韓鶴子総裁に侍る国家体制を目指すという〈希望的予測〉を述べたのだろう。
そうした計画の足がかりが、安倍元首相への接近だった。
(第2回に続く)
source : 文藝春秋 電子版オリジナル

