月刊「文藝春秋」の名物政治コラム「赤坂太郎」。対米交渉で成果がなければ参院選後に政界再編か
世界経済をぶっ壊そうとするトランプ関税は、結果として、風前の灯火だった石破政権を延命させることになった。自分の実利にしか関心のない米大統領が日本の首相・石破茂に配慮するはずもない。米国依存に慣れ切った与野党がトランプの傍若無人ぶりに度肝を抜かれ、関税交渉が終わるまで「石破降ろし」の矛を収めたにすぎない。
石破が自民党の衆院当選1回生15人に商品券10万円分を配った問題が発覚した3月には、党内の参院議員改選組から首相退陣論も出たが、政局の機運は一気にしぼんだ。
野党第一党の立憲民主党も石破攻撃にブレーキをかけた。代表の野田佳彦は石破の「国難」との主張に応じ、内閣不信任決議案の提出を見送る考えに傾いた。夏の参院選は「石破相手の方が戦いやすい」との思惑もあり、トランプ関税で不信任案提出を見送る大義名分が立ったのは「願ったり、かなったり」(党重鎮)だったからだ。
図らずも参院選まで首相の座に留まる見通しになった石破にとって「ピンチはチャンス」(自民党筋)だ。トランプ関税で世界経済が失速しても、対米交渉をまとめて国民生活のダメージを最小限に抑えれば政権浮揚を図れる……はずだったが、出足から躓いた。折からの物価高も踏まえた経済対策を巡って迷走を極めたのだ。

トランプがすべての国と地域に10%の関税を課す一方、日本には相互関税24%を適用すると発表し、4月7日に東京株式市場が暴落すると、自民、公明両党から経済対策の必要性を唱える声が噴出。両党は全国民に一人3万〜5万円の現金給付を検討し始めた。
公明党の「本命」は消費税減税だったが、関連法改正と周知する期間が必要ですぐには実施できない。加えて自民党内では税制調査会幹部らに慎重論が根強い。そこで、とりあえず短期間で実行できる現金給付に落ち着いたのだが、何のことはない。与党の苦戦が確実視される参院選を前に、トランプ関税に便乗して「バラマキ」をする腹づもりだったのだ。
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source : 文藝春秋 2025年6月号