旧態依然とした日本の「おじさん政治」。憲法改正で女性候補を増やすしかない
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▶︎「失望した」「左に転向したのか」という批判や罵倒の嵐が届く。日本の政治に対する意識がいかに遅れているのかを身をもって感じ愕然としている
▶︎森前会長の「わきまえる」ことを女性の美徳とするかのような一言は、日本への誤解や偏見を固定化する
▶︎日本の現状を打破するために、候補者の一定数を女性に割り当てる「クォータ制」を導入するべきだ
稲田氏
「失望した」「左に転向したのか」
女性活躍を主張すればリベラル、左翼と批判される。いつの間に日本はこんな不寛容な社会になってしまったのでしょうか。
私は2年前から同期当選の仲間とともに議員連盟「女性議員飛躍の会」(以下、飛躍の会)を立ち上げ、「自民党のおじさん政治をぶっ壊す!」と意識改革を訴えてきました。未婚のひとり親に対する所得控除を実現させたことを皮切りに、養育費の不払い問題、子供への性暴力問題からコロナの緊急支援まで、党本部や政府に政策を提案しています。
しかし「飛躍の会」の立ち上げから現在まで、私のもとに届くのは、「失望した」「左に転向したのか」という批判や罵倒の嵐。ある程度、覚悟はしていましたが、日本の政治に対する意識がいかに遅れているのかを身をもって感じ愕然としています。
東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の会長を辞任された森喜朗先生は、同じ北陸の選挙区で長年、お世話になってきましたし、派閥「清和会」の大先輩でもあります。政治家としての実績はもちろん細やかな気配りのできる方です。
森先生は女性を蔑視する意図はないと発言を撤回し、釈明されました。しかし日本国内だけでなく、海外からも批判が寄せられました。
行革担当大臣や防衛大臣に就いていた頃、私は、海外に行くたび、日本に対する理解の無さを目の当たりにしました。2014年1月、米ワシントンで講演した際には、駐在していた日本人女性記者から「米国では日本について『フジヤマ、ゲイシャ』のイメージで言及する人や、女性が満足に教育を受けていないと考える人も少なくない」と聞いて驚愕しました。
森先生の発言で特に問題視されたのは「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」「女性は競争意識が強い」との部分ですが、私が違和感をもったのは、「わきまえる」ことを女性の美徳とするかのような一言。このような発言が日本への誤解や偏見を固定化させかねません。
新たに会長に就任された橋本聖子先生はご存じのとおり五輪の申し子と言われる方であり、政治家としての経験、知見も十分にお持ちです。東京都の小池百合子知事、丸川珠代新五輪担当大臣とともに、女性政治家の底力を見せて、東京五輪を成功に導いてほしいと願っています。
組織委会長を辞任
女性議員は一向に増えず
いま私たち政治家に求められているのは、今回の件を単なる舌禍問題で終わらせるのではなく、これを機に政界の女性進出をスピード感をもって進め、政治に多様性をもたらすことです。
かねてより日本は女性の社会進出が遅れていると指摘されてきました。世界経済フォーラムが一昨年発表したジェンダーギャップ指数は153カ国中121位。その最大の原因は女性議員が一向に増えないことです。女性議員が占める割合は衆議院でわずか約9.9%、参議院は22.9%。政治分野におけるジェンダーギャップ指数は144位とG7で最低です。
なかでも自民党は、衆議院の女性議員の割合が7%と極めて低い。私が初当選した2005年の郵政解散選挙では16人の女性議員が初当選しました。女性でも能力があれば議員になれるし、この調子で女性議員は増えていくだろう。女性枠を設けるのは間違っている――そう考えていましたが、甘かった。この16年間で衆議院における自民党女性議員は、増えていないどころか5人も減っているのです。
男性優位の政治が変わろうとせず女性議員が全く増えない。これは長く政権与党にあった自民党の責任に他なりません。
自民党には自身の主張を声高に叫ぶのではなく、円滑な人間関係を重視する気風が色濃く残っています。保守政治の美徳ともいえますが、これまでの自民党では、森先生がおっしゃったように、女性議員が「わきまえて」しまうことが多かった。その結果、女性の政治における参画が遅れてしまっている。
一般的に、女性候補はスキャンダルや不祥事など非常事態の際、イメージアップの目玉として登用される傾向が根強くあります。しかしピンチヒッターの役目を終えると、地元で女性議員に対する風当りは結構厳しく、次の公認をとることが難しいケースも少なくない。
私が尊敬する政治家の一人が、自民党の大先輩にあたる故中山マサ先生です。マサ先生は戦後の色濃い1960年代に女性政治家の道を開拓された、女性議員の草分け的存在です。池田勇人内閣では厚生大臣を務められました。私は、議員会館の事務所に写真を飾っています。
いまの政界にはマサ先生のようなロールモデルがおらず、若い女性が政治家を目指す機運がありません。それは私を含めた現役の女性議員たちの力不足にも原因があり、そこは深く自省しています。しかしながら、それを承知のうえで申し上げるのですが、女性議員は注目される反面、バッシングも受けやすい。党全体で女性議員を守り、育てる姿勢も求められているのです。
憲法改正で女性候補者を増やせ
こうした日本の現状を打破するためには、憲法改正が必要だと考えています。と言っても、憲法自体で女性議員数を規定しようというのではありません。
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source : 文藝春秋 2021年4月号