アベノミクス「出口」はひとつしかない

小林 慶一郎 慶應義塾大学教授 東京財団政策研究所研究主幹。キヤノングローバル戦略研究所研究主幹を兼務
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財政再建に向け長期的ビジョンを示してほしい

安倍晋三元首相 ©文藝春秋

 安倍晋三首相の自民党総裁3選が決まりました。これから3年の任期があるわけですが、経済的な面でいうと、その間に長期的なビジョンをしっかりと示して欲しいと思います。それは、財政再建の道筋をつけるということです。安倍政権になっても政府債務は増え続け、現在では約1300兆円と天文学的な数字になっています。

 来年10月には、消費税が10%に引き上げられることが予定されています。それによって、2020年の東京オリンピックの前ぐらいまでは、一時的に財政が平穏になったかのように見えるでしょう。しかし、その後の10年、20年を試算すると、債務の量が幾何級数的に増えて行きます。

 このままでは、極端な金融緩和を続けているアベノミクスの「出口」さえも見えてきません。金融緩和の「出口」は、財政再建と一体で進めるしかないからです。

 まずは、アベノミクスの5年9カ月を振り返ってみましょう。

 アベノミクスによる大胆な金融政策によって足もとの景気はよくなってきている状況です。

 雇用統計を見ても、有効求人倍率は1.63倍に上がり、失業率は3%を割るまでに下がっています。また、私のように大学にいると、新卒の採用がバブル期並みに売り手市場になっていることを実感します。

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source : 文藝春秋 2018年11月号

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