ノーベル賞受賞者は、なぜ北里柴三郎にほれ込んだか

第2回

大村 智 北里大学特別栄誉教授

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ビジネス 読書 医療

各界で活躍する”達人”たちが、人生を変えた「座右の書」を紹介する新連載。達人たちはどのような本を読み、どのような影響を受けてきたのか、その半生とともに振り返る――。

第2回は、感染症の特効薬「イベルメクチン」の開発によりノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智さんが登場。(取材・構成 稲泉連)

日々、備忘録に書き留めている

 1984年に北里研究所の副所長になって以来、私は「腹中有書」と題した備忘録を作り始めました。今では3冊になるこの分厚いノートには、日々、本や新聞などを読んでいて感銘を受けた言葉や、ふと思い浮かんだ言葉を書き留めています。

「腹中有書」とは易学者であり思想家の安岡正篤氏の墨蹟集の中にあった言葉です。どんなことでも単なる知識として持っているだけではいけない、言葉や知識とは肚の中にしっかりと収めてこそ、初めて自分の行動の規範になる、という意味でしょう。

大村智氏 ©時事通信社

大村智(おおむら・さとし)

1935(昭和10)年、山梨県韮崎市生まれ。山梨大学学芸学部卒業。夜間高校の教師を務めながら、63年に東京理科大学大学院修士課程修了。北里大学薬学部教授、北里大学北里生命科学研究所所長などを経て、2013年から北里大学特別栄誉教授。15年にノーベル生理学・医学賞を受賞。絵画など美術品の蒐集と鑑賞を趣味としており、女子美術大学理事長も務めた。2023年6月に日本エッセイスト・クラブ会長に就任。著書に『ストックホルムへの廻り道』(日本経済新聞出版社)、『人間の旬』(毎日新聞出版)などがある。

 

 私は安岡氏のこの言葉に深く頷くものを感じ、以来、「ああ、よい言葉だな」と思った時は、それをノートに記すようになったわけです。ノートには新聞記事や本を読んで印象に残った箇所のコピーを張り付けてもいますが、やはり自分の「肚」の奥に言葉を収め、しっかりと研究哲学や行動規範として活かすためには、静かな心で言葉を記す必要がある。そこで、「これは」という言葉に出会ったら、机に座って墨をすり、心を落ち着かせて墨書をするようにしてきました。

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