豊洲移転「築地の男」たちのホンネ

この2年間は何だったのか

川本 大吾 時事通信社水産部長
ニュース 社会
豊洲市場でのマグロ初競り ©文藝春秋

 日本一の魚河岸、東京・築地市場が10月6日、惜しまれながら83年の歴史に幕を閉じた。施設の老朽化に伴う築地での再整備を1996年にいったん中止し、市場の移転を模索してからおよそ20年。移転先である豊洲市場の土壌汚染問題に揺れ動いた末、ようやく10月11日の新市場開場にこぎつけた。

 移転直前の数カ月、関係業者はどのような心境で準備を進めていたのか。卸や仲卸など当事者たちに本音を聞くと、そのドタバタぶりが浮かび上がった。

 まずは最近の移転までの経緯を振り返っておこう。

 2016年8月末、小池百合子知事が就任早々、豊洲市場の安全性への懸念から、移転を延期した。その後は、土壌対策に必要な「盛り土」がされていなかったことが判明したり、地下水のモニタリング調査で、環境基準を大幅に上回る有害物質が検出されたりしたため、「豊洲にはもう行けないだろう」という市場関係者の見方が広がった。だが、施設の地下ではなく「地上は安全」という専門家の分析を盾に、小池知事は一転して移転を決断。昨年末から急ピッチで追加対策を進めていた。

 対策工事の完了に伴う専門家の確認を踏まえ、小池知事は今年7月31日、豊洲市場について「産地、出荷者、市場関係者、消費者、すべての関係者に安心して利用していただける安全・安心な市場として、開場する条件を整えることができた」と、安全宣言を行った。

 8月1日、東京都は農林水産相に対し、築地に代わる中央卸売市場として豊洲市場の認可を申請。9月10日に同相から正式に認可され、移転へ向けた主な手続きが完了し、豊洲市場の開場となった。

勝手の違いに戸惑う業者

 合計約40ヘクタール(東京ドーム8.5個分)の面積で築地市場の1.7倍。豊洲市場は、築地市場から南東に2.3キロ離れた場所にある。一般道路で区切られた3つのエリアに分かれ、水産卸、水産仲卸、青果に区分される。水産の卸は産地から魚を集荷し、競りや相対(あいたい)取引で仲卸などに販売。仲卸は鮮魚店やすし店などに魚を卸す。

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source : 文藝春秋 2018年11月号

genre : ニュース 社会