★楽天の携帯に暗雲
楽天(三木谷浩史会長兼社長)の携帯電話事業に首を傾げる人が増えている。
最大の理由は通信インフラ整備費用として2025年までに6000億円を投じるとしている点。NTTドコモ(吉澤和弘社長)は通信インフラ整備費として昨年度約6000億円を投じた。楽天が計画する7年間の投資額が、ドコモの1年度分と変わらないのだ。
三木谷氏は、設備投資が少なくて済むのは、構築する通信インフラが「第4世代(4G)」と呼ばれるもので、すでにNTTドコモやKDDI(髙橋誠社長)、ソフトバンク(宮内謙社長)が整備を終えたものだからだ、と説明。さらに大手3社などの技術者を引き抜き、効率的に作るから投資額が抑えられるのだという。だが、大手通信各社関係者は一様に「そんな少額で済むはずがない」と語る。
もう一つの大きな理由は参入の経緯だ。楽天が第四の携帯事業会社として参入できるのは、防衛省や放送事業者が使っていた周波数帯を通信事業者に割り当てる規制改革のおかげ。これまで総務省は携帯電話料金の高さを問題視し、格安スマホの普及を図ろうとしてきた。それゆえ「新規参入は楽天と総務省の阿吽の呼吸によるもの」と多くの通信関係者が指摘してきた。
だがある総務省関係者は、「新規参入に向けて三木谷さんが掛け合った先は総務省ではなく、官邸だった」とこれを否定する。かねてより三木谷氏は安倍晋三首相と親密な関係を保っており、今年は三木谷氏が代表理事を務める経済団体「新経済連盟」の新年会に安倍首相がゲストに招かれた。「二人の蜜月関係が新規参入の道を開いた可能性がある」(同前)のだ。
だが急速に風向きが変わりつつある。楽天が携帯事業参入を表明したのは昨年末で、周波数割り当てを申請したのは2月26日。それから間もなく財務省の決裁文書書き換え疑惑が報じられた。
以来、官邸と近い関係にあることは様々な疑念を抱かせるようになった。「政権の後押しを当て込み、投資額は6000億円と見積もったのではないか。いずれ設備投資負担が計画を大幅に上回り、首が回らなくなる局面があるのでは」。大手通信会社幹部にはそんな見立てをする人物もいる。第四の携帯会社の先行きに暗い雲がかかってきた。
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source : 文藝春秋 2018年05月号