武田巨額買収の行方、伊藤忠・謎の追加出資、金融庁と松本大の思惑、業界を左右するゾゾ

丸の内コンフィデンシャル

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★武田巨額買収の行方

 社長就任から4年。武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長が起死回生の賭けに出た。4月末、同社は五度目の買収提案でアイルランドの製薬大手・シャイアー(フレミング・オルンスコフCEO)と暫定合意した。武田がシャイアーの全株を取得、完全子会社化する方針だ。買収総額は日本円にして約7兆円。

 だが市場には巨額の財務負担を危ぶむ声が大きい。武田は2011年以降M&Aを繰り返し、2017年末時点の有利子負債は1兆1000億に上る。今回、買収総額の4割強にあたる3兆円超を現金で支払う計画で、負債はさらに膨らむ。増資による株式希薄化への懸念も強い。提案通りに新株を発行すれば、現在の時価総額を上回る巨額増資となり、1株当たり利益の大幅な希薄化につながる。武田の株価は下落し続けた。

 それでもなぜ買収にこだわるのか。英製薬大手のグラクソ・スミスクライン幹部のウェバー氏が、当時の長谷川閑史社長(現・相談役)に経営改革を期待され、社長に就任したのが2014年。だが今年3月期の連結純利益の予想は、最高益を記録した2008年の半分以下と、成果はさっぱり。一方のシャイアーは武田を上回る高収益企業。買収で日本企業としては初めて世界トップ10入りを果たすことができる。ただ「シャイアーは何度も買収が取り沙汰されてきたが成立しなかった、いわば棚晒し状態の企業。高値掴みではないか」(証券アナリスト)との声もある。

 今後注目されるのが6月の株主総会だ。「武田の創業家は長谷川社長時代から失敗続きのM&Aを苦々しく思っており、現経営陣との関係は良くない。まして今回のような巨額の買収はもってのほか、という思いが強い」(大手製薬会社社長)。2014年にはウェバー社長就任時に反発した一部創業家やOBが、株主総会で質問状を出した。創業家の武田國男氏は、経営からは退いているものの、影響力はいまだにある。現経営陣の苦悩は続きそうだ。

★伊藤忠、謎の追加出資

 伊藤忠商事(鈴木善久社長)が資本業務提携先のユニー・ファミリーマートホールディングス(髙柳浩二社長)に追加出資を決めた。総額1200億円を投じ、出資比率を現在の41.45%から50.1%に引き上げる。

 会見で鈴木社長は追加出資を通じ、電子マネーなどの金融事業やユニーやファミマの顧客分析などを強化する方針を打ち出したが、真の狙いは別なところにありそうだ。

 伊藤忠は2016年3月期決算で純利益が総合商社首位に。だが翌年3月期決算では三菱商事(垣内威彦社長)がトップを奪還。前期は三井物産(安永竜夫社長)も巻き返し、今期の伊藤忠は定位置の3位に落ち着きそうだ。

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source : 文藝春秋 2018年06月号

genre : ビジネス 企業