★経団連次期会長の課題
11月16日、安倍晋三首相は葛西敬之JR東海名誉会長、古森重隆富士フイルムホールディングス会長という、いつもの仲間で会食をした。だがこの日、いつもと違ったことがある。中西宏明日立製作所会長が同席したことだ。
2018年5月に任期満了を迎える榊原定征経団連会長(東レ相談役)の後任に、副会長の中西氏が就くことが固まった。日立出身者が就任するのは初めてだ。
榊原氏が後任を選ぶ際に基準とした、「榊原三条件」というものがある。(1)日本を代表するメーカー、(2)国際的に知名度のあるグローバル企業、(3)安定した黒字企業――の3つだ。中西氏はこの条件を満たしている。リーマン・ショック後の経営危機の際、川村隆会長兼社長(当時)と共に経営改革を担い、2010年に社長に就任、黒字化に成功した。海外でのインフラ事業拡大に注力し、日立を国際的に知名度の高いグローバル企業にした。財界活動にも積極的で、政府の「未来投資会議」の民間議員を務めるなど安倍首相とも近い。
これまで、中西氏の師匠・川村氏が経団連会長就任を断っているため、中西氏も受けるか微妙と見られていた。だが2017年6月、川村氏の東京電力会長就任で風向きが一変した。また日立は英国の原子力発電所事業で政府に支援を要請しており、無下には断れなかったのだろう。
安倍政権にとっては渡りに船だ。「日立中心に原発事業を再編できれば東芝への支援は不要になる」(官邸筋)からだ。
課題もある。「経団連会長を出したことがない日立が、スタッフや拠出金など会長を支える体制を作れるか」(経団連幹部)という問題。もう一つは「首相ベッタリ」と揶揄された榊原氏の二の舞を避けられるかという問題だ。
任期は2018年6月から2022年までの4年間。中西氏の手腕やいかに。
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source : 文藝春秋 2018年01月号