★神鋼解体のシナリオ
10月にアルミ・銅製品のデータ改ざんが行なわれていたことを公表した神戸製鋼所(川崎博也会長)。連日新たな不正が発覚し、子会社の製品がJISの認定を取り消される事態にまで発展した。
同社には安倍晋三首相が1979年から82年まで勤めていた。今年6月には神戸製鉄所を訪れ、1期後輩にあたる川崎氏と視察も行なっている。そのため安倍首相はデータ改ざん問題に対し、「誠実な責任感を取り戻してもらいたい」と語った。
だが実は安倍首相が社員時代から、同社は決して誠実な会社ではなかった。
川崎氏は鉄鋼部門一筋で、2013年4月に社長に就任した。経歴を考えると一見、本流を歩んできたように思えるが、そうではない。同社はメーカーでありながら、ものづくり出身者がトップになれなかったのだ。原因は1969年の内紛劇に児玉誉士夫と配下の総会屋が関与したこと。それ以降、総会屋対策が重要な経営課題に。十一代・鈴木博章社長以来、十七代目までは総会屋の窓口である総務部長や総務担当役員を経てトップになっている。営業出身の十八代目が09年の地方議員に対する選挙資金肩代わり事件で辞任し、十九代目はようやく理系社長に。二十代目が川崎氏となる。
今回の不正の対策費用は1000億円規模に膨らむと見られ、業界再編が進む可能性が出てきた。鉄鋼業界は1位が新日鐵住金(進藤孝生社長)、2位がJFEホールディングス(林田英治社長)、3位が神戸製鋼だが、2位のJFEが買収に乗り出すとの見方が有力。「買収すれば新日鉄と肩を並べることができ、神戸製鋼のアルミ事業を取り込むことで、鉄とアルミの複合材を強化できる」(経団連元副会長)という。
首相が「私の社会人の原点」とまで語る同社の行く末やいかに。
★監査法人に再編の波
監査法人の再編機運が高まっている。900社あまりの上場企業、非上場を加えると約4000社の被監査企業を抱える国内最大手、新日本監査法人(辻幸一理事長)との契約を解除する企業が相次ぎ、凋落が著しいためだ。
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source : 文藝春秋 2017年12月号