「イスラム国」空爆の現場レポート

白川 優子 国境なき医師団・看護師
ニュース 社会 国際

オペ室から見た「暴力と恐怖」による支配の実態

空爆で破壊されたイラク北部モスル ©時事通信

 無差別テロが再び世界を震撼させた。
 8月17日夕刻にスペインのバルセロナ、18日未明には郊外のカンブリスという街で自動車が歩道に突っ込み、次々と人を撥ねた。約130人の人が負傷し、死者は14人に上った。被害者の多くは観光客であった。
 イスラム国(IS)が犯行声明を出したのは、その直後だった。シリアなどでIS掃討作戦を進める「米軍主導の有志国連合への報復」だという。
 ISを巡っては、7月9日にイラクのアバディ首相がイラク第二の都市モスルを奪還したと発表し、事実上の勝利宣言を出した。しかし、現在もイラクとシリアは戦火の中にある。有志国連合によるIS掃討作戦が引き続き行われているためだ。
 各地で勃発する戦闘行為。昼夜を問わず行われる空爆。毎日のように一般市民から夥しい数の死傷者が出ている。
 そんなIS支配下の紛争地で緊急医療活動に従事している日本人看護師がいる。国境なき医師団に所属する白川優子氏(43)だ。日本で手術室看護師として働いていた白川氏は36歳の時に同医師団に参加。イラク、イエメン、南スーダンなど紛争地をメインに過去13回の派遣を経験してきた。
 白川氏は、6月21日から7月19日まではモスル、7月28日からはISが首都と位置付けるラッカ近郊の村に滞在し、現在も引っ切り無しに運び込まれてくる負傷者の手当てに奔走している。
 オペ室から見えた紛争地の実態、IS支配下にあった人々の現状を白川氏がレポートする。

膀胱の中の銃弾

 私にとって、14回目となる派遣先は、イラク北部の都市モスルだった。

 この街は2014年からISが占拠していたが、今年に入って以降、イラク軍によって部分的に解放されつつあった。

 6月21日、私はモスルの東側エリアにある街に到着した。

 ここは、数カ月前に3年間のISの支配という地獄から解放された地域。私たちは拠点をこの街に置いた。チグリス川を挟んだ向こう側、モスルの西側ではイラク軍とISの激しい戦いが未だに繰り広げられている。

 チグリス川にかかる橋は5つあるが、そのすべてが破壊されている。従って、西側の戦闘がこちらに及ぶことはないのだが、逆に言うと、西側で戦闘に巻き込まれている患者のダイレクトな収容も難しい。

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source : 文藝春秋 2017年10月号

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