宇宙の謎がどんどんわかってきた

布施 哲治 情報通信研究機構主任研究員
ライフ サイエンス

カッシーニからすばるまで探査・観測の最新成果

はやぶさ2 ©時事通信

 布施哲治氏(46)は、国立研究開発法人「情報通信研究機構 鹿島宇宙技術センター」の宇宙通信研究室に所属する主任研究員。専門は太陽系天文学、天体力学・軌道力学で、2010年まではハワイにある国立天文台「すばる望遠鏡」の広報担当研究員を務めた。
 小惑星探査機「はやぶさ」「はやぶさ2」や、NASAの冥王星探査ミッションにも参加し、現在は21年に打ち上げ予定の次期技術試験衛星の開発を手がける。その布施氏が宇宙研究の最前線を解説する。

 宇宙の探査や観測は、この数年で大きな成果を上げ、生命の存在が期待される天体も続々と見つかっています。まずは、最近の成果から紹介しましょう。

 NASAの土星探査機カッシーニが、「グランドフィナーレ」と呼ばれる最終ミッションに入りました。これまでの周回軌道を離れ、4月末に土星本体と輪の間のわずか2000キロの隙間を通過しながら、輪の内側から撮った画像を送ってきています。

 土星の輪は大小さまざまな氷の粒が集まった帯と考えられていますが、その内側にも見えないだけで細かい粒があると考えられていました。カッシーニは秒速34キロという超高速で飛んでいるので、小さな氷の粒と衝突しても甚大な被害が出ます。そこで、円盤状のアンテナを盾にする姿勢をとって突入しました。その間は地球との通信はできません。

 地球との通信が無事に回復してみると、懸念されていたような事態は起こりませんでした。細かい解析を待たねばなりませんが、土星と輪の間に氷の粒がほとんどないことは学者たちを驚かせました。

エンケラドスに生物が?

 カッシーニは97年に打ち上げられ、04年に土星に到着して、多くの発見をもたらしました。そのひとつが、土星の第二衛星エンケラドスを観測して、生命が存在可能な条件とされる有機物、水、エネルギーが揃っていると突き止めたことです。エンケラドスは全体が氷で覆われているので、太陽の光を反射してキラキラ輝いて見えます。表面はツルツルなのかと思いきや、近くから撮影すると冬山のようにゴツゴツしていることがわかりました。

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source : 文藝春秋 2017年07月号

genre : ライフ サイエンス