極限状態になったとき、若い時に培った基礎体力がものをいうのです(聞き手・入江和子)
――三笠宮崇仁親王殿下(98)が僧帽弁閉鎖不全で心臓手術を受けられてから約一年半。白寿となる今年も、新年一般参賀にお出ましになりました。
三笠宮さまが聖路加国際病院で心臓手術を受けられたのは、一昨年の二〇一二年七月。同年二月に天皇陛下が七十八歳で心臓バイパス手術を受けられたばかりでしたが、皇室最高齢である殿下の「九十六歳の心臓手術」には国民も驚きました。
今日は、三笠宮さまの手術について、そしてこれから増えて行くであろう高齢者の手術のあり方についても聞かせて下さい。
川副 当時、私は聖路加国際病院に勤めていましたが、手術を執刀する前日まで殿下にお会いしたことはありませんでした。実際には「お会いした」という言葉は不適当かもしれません。主治医である新沼廣幸先生から「手術ができるか診て欲しい」と頼まれたときには、殿下は既に集中治療室にいらっしゃった。その時の状況は、心機能が低下し、血圧が五〇台に下がることもありました。殿下は呼吸器をつけられ、意識もありませんでした。
尿の量も減少しており、まさに「極限の状態」です。あの日、あと一日決断を遅らせていたら腎不全になっていたと思います。腎不全になったら人工透析をしなければなりません。御高齢での人工透析は非常に厳しい。
しかし、その極限状態の中でも、殿下のお身体を診させていただくと、手術に耐えうる、非常にしっかりとした骨格をされていた。ご高齢者に多い、痩せ細った姿ではありませんでした。私は迷うことなく、「手術をやりましょう」と申し上げました。
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source : 文藝春秋 2014年04月号