NHKアナウンサーとして、数々の番組の司会・進行役を務めた鈴木健二(93)。彼に憧れて同局に入ったフリーアナウンサーの三宅民夫氏が、鈴木の持つ「言葉の力」を語る。
私の宝物は、憧れの大先輩、鈴木健二さんから頂いた手紙。命の支えであり、言葉の力がどこから来るのか、教えられるものです。
1952年にNHKに入った鈴木さんは、テレビの礎を築いた一人。1969年7月、人類が初めて月に立った時も、特別番組の司会にあたりました。当時高校生だった私は、番組に釘付けになりました。鈴木さんの言葉には不思議な力があり、他の人にはない感動を覚えるのです。
鈴木さんに憧れ、私もNHKに入局しました。しかし大先輩で話など出来ません。印象的だったのは、その机です。本が1メートル近い高さに積まれ、コの字形の壁が出来ていました。私も取材準備で本を読みますが、1〜2冊で時間切れ。鈴木さんは超絶した集中力で、数多の資料を読み込んでいたのでしょう。
台本も頭に入れて本番に臨んでいました。身も心も全てを番組と視聴者に捧げるつもりで、言葉を紡ぎだされていたのだと推察しています。
私も心に届く言葉で伝えたいと様々な番組に挑戦しました。ところが54歳の秋、左腎臓に腫瘍が見つかり、腎臓摘出手術を受けることになりました。一転、奈落の底です。
そこに、あの鈴木さんから見舞いの手紙が届いたのです。「OBの鈴木健二です。思い出して下されば幸いです」と丁重に始まり、鈴木さんも50歳で大出血があり、左腎臓の摘出手術を受けたことが記されていました。そして「休養し、病気を後に引かないことだけに気を配って下さい」と結ばれていました。人を深く思う言葉に、悲観していた私は救われました。心に光が差すようでした。
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source : 文藝春秋 2023年1月号