平尾誠二 坂本龍馬みたいな人

101人の輝ける日本人

沢松 奈生子 元プロテニス選手
ライフ スポーツ

現役時代には神戸製鋼で7連覇を成し遂げ、「ミスターラグビー」と呼ばれた平尾誠二(1963〜2016)。同じ関西出身で、親交の深い元プロテニスプレーヤーの沢松奈生子氏が思い出を語る。

平尾誠二氏 ©時事通信社

 初めてお目にかかったのは、私が高校1年生、平尾誠二さんは神戸製鋼の現役選手で、メディアの対談企画でした。奇しくも平尾さんと同じ1998年に私も引退し、その後、食事やゴルフをご一緒する関係が続きました。

 平尾さんはずっと「インテリジェンス」という言葉を口にしていました。体格的に不利な日本人が海外の屈強なアスリートと対峙するには、頭を使う必要がある、と。

 海外のアスリートと比べて、日本人が優れているのはメンタルです。パワーやスピードに頼る海外選手は、うまくいかなくなると、カッとなって、たちまちプレーが不安定になる。一方、日本人は非常に我慢強く、メンタルが常に安定しています。

 私にはセリーナ・ウイリアムズのような200キロを超えるサービスは打てない。大きな動きでは太刀打ちできないけれど、グッと我慢して、日本人らしい丁寧な技術で対応し、相手のメンタルが崩れる瞬間を待つ。そんな話を私がすると、平尾さんの目がキラキラ輝くんです。

平松奈生子氏 ©時事通信社

 夜の街にも連れ出してもらいました。神戸のバーでラグビーの未来を熱く語ったかと思えば、しばらくすると見ず知らずのオジサンと下ネタで盛り上がっている。あんなに格好いいのに全く飾らず、人間的な厚みもすごい。出会う人すべてを魅了し、味方にしてしまう。坂本龍馬みたいな人だなと思っていました。

 生前の平尾さんは、2019年のW杯日本大会を心の底から楽しみにしていました。ご存命だったら、きっと喜んだであろう試合やプレーがいくつもありました。ラグビー素人の私から見ても、当時の日本代表は「ONE TEAM」で、インテリジェンスをもって戦っていたと思います。アイルランドやスコットランドを日本代表が倒した試合を、平尾さんに見せてあげたかったです。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

12,000円一括払い・1年更新

1,000円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
雑誌プランについて詳しく見る

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2023年1月号

genre : ライフ スポーツ