没後1年を経ても惜しむ声が絶えない落語家の柳家小三治(1939〜2021)。中学生のとき小三治の高座に魅せられ、その門を叩いた柳家三三(さんざ)氏が語る。
師匠から噺を直接教わったことはありません。僕が二ツ目になる少し前に、差し向かいで「道灌」を聞いてもらったことならありますが、冒頭の「ご隠居さん、こんにちは」「だれかと思ったら八っつぁんかい」のくだりで「だめだ」と言われてしまった。それから1時間近く同じせりふを繰り返しても、ずっと「だめ」。なにがどうだめなのかは指摘してくれず、それでおしまいでした。その後、真打ちになる前に師匠の前座で「道灌」をやったとき、えらくウケたんです。高座が終わって意気揚々と袖に引っ込むと、師匠がすれ違いざまに「あんなもんじゃ、まだまだ」。師匠が感想を言ってくれてうれしいような、でも悔しい気持ちは忘れられず、それから数年は師匠の独演会の前座では意地でも「道灌」しかやりませんでした。
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source : 文藝春秋 2023年1月号