江川 卓 インハイの秘密特訓

101人の輝ける日本人

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「昭和の怪物」投手・江川卓(67)。2度のドラフト指名拒否など大騒動の末、読売巨人軍に入団した。プロ入り後、好敵手となったのが、広島カープの四番・山本浩二氏だった。

江川卓

 法政大学の九つ下の後輩でもありますし、一連の入団経緯から「えらい生意気なやつだな」というのが第一印象です。だから打ちのめしてやろうと思っていましたね。

 でも、いざ対戦してみたら、すごい投手でした。初速と終速が変わらず、手元でホップして伸びてくるから打ちづらい。結局1年目の打率は1割台と完敗でした。

 剛速球を投げるだけでなく、ゲームをつくれるクレバーな投手でもありました。うまく手抜きをして投げながら走者を出したらピシャリと抑え完投する。江川の1年目のオフ、歌番組か何かで共演したときに話をしたら、頭がいいやつだなと感心してね。打ちのめしてやろうと感情的になるのはやめて、ひとりの大投手だと認めようと思いました。

 引退した今だから明かせますけど、翌年のキャンプから対江川対策をしたんですよ。彼の武器は高めの球を振らすこと。打撃マシーンを通常より3メートルほど近づけて、インハイ(内角高め)の速球のストライクゾーンを見極めて打つ。ボール球は見逃して真っすぐを一球で仕留められるよう練習しました。

山本浩二

 超プロ級のカーブも投げるんだけど、打てるものなら打ってみろと直球を投げ込んでくる。常に真っ向勝負をしてくれましたね。2年目以降は対策が功を奏し、後楽園球場でカウントボール3から直球を捉えて左中間にホームランを打ちました。彼らしいなと思ったのは10球連続でインハイを投げてきたこと。11球目でようやくホームランを打ちましたよ(笑)。今まで対戦したなかで、最強のピッチャーといえば、左が江夏豊、右が江川だね。

 お互い現役を引退してから番組の企画で釣りやゴルフを一緒にしたのも楽しかった。ジョークもうまいし。そういえば、ゴルフでも負けず嫌いでね。江川という男は根っからの勝負師なんですよ。

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source : 文藝春秋 2023年1月号

genre : ライフ スポーツ