経済安全保障に国民の理解を

この国をいかに守るか

高市 早苗 経済安全保障担当大臣
ニュース 政治 経済 国際
高市早苗氏 ©高市早苗事務所

 近年、安全保障の裾野が外交・防衛だけでなく経済分野にも拡大し、国や国民の皆様の安全を経済面から確保することが喫緊の課題となっています。そのような中、安全保障と経済を一体的に捉えて政策を組み立て、国益を確保するというコンセプトが「経済安全保障」として注目されています。

 まずは、サプライチェーンの問題です。サプライチェーンが多様化する一方で、各国で重要物資の他国への過度な依存による供給リスクが顕在化しています。コロナ禍では我が国でも国民生活や経済活動を脅かすに至った事例もありました。また多くの産業に必要不可欠な半導体は、世界的に不足しており、国内でも自動車などの生産が遅延するケースが見られます。日本は一定の優位性がありますが、半導体サプライチェーンの更なる強靱化は極めて重要です。

 次に、先端的な技術の獲得をめぐる動向です。AIや量子といった技術は様々な利用可能性を持つものであり、経済・社会に大きな影響を及ぼすと同時に、軍事に使用され安全保障に本質的な変化をもたらす可能性もあります。日本がこれらの技術獲得にしのぎを削る諸外国と伍する形で研究開発を進めること、また日本の技術が不当に海外に流出しないようにすることが必要です。

 そして、サイバーセキュリティ。DXの進展により、国民生活の利便性が飛躍的に向上する一方、全世界的にサイバー攻撃の脅威が増大しています。大阪府で地域診療の要となっている病院の電子カルテシステムが、サイバー攻撃により使用不能になり、救急診療などが一時停止したことは記憶に新しいと思います。また、政府機関の情報システムなどがサイバー攻撃を受けて、一時、閲覧不能になる事案も発生しました。これらは、従来のように安全保障分野や、経済分野だけに割り切って対処するのが難しい課題です。

 このような情勢の変化に対応すべく、国家安全保障局に経済班を設置するなど体制整備を進めており、令和3年10月の岸田政権発足に伴い初めて経済安全保障担当大臣が置かれ、令和4年8月から私が担当しております。各省庁の連携のもと様々な経済安全保障の取組が着々と実施されるとともに、令和4年5月には「経済安全保障推進法」(以下、「推進法」)も成立しました。

サイバー攻撃への対応も課題 ©iStock

推進法の課題とは何か

 政府としては「国民生活、経済活動の基盤を強化し、他国・地域に過度に依存しない、経済構造の自律性を確保すること」、「先端重要技術の研究開発とその実装を進め、『強み』となる技術などを持つことにより、他国に対する優位性や国際社会における不可欠性を確保すること」、同時に「同志国との協力を拡大・深化していくこと」、これらを柱に据えて、各種の施策を推進していきます。

 まずは「推進法」を、実効力を伴う制度として軌道に乗せることが重要です。「推進法」は、(1)サプライチェーンの強靱化、(2)基幹インフラ役務の安定的な提供、(3)先端的な重要技術の開発支援、(4)特許出願非公開の四本柱で構成されており、(1)と(3)の分野は、昨年8月に施行済みでステップを着実に進めています。

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source : 文藝春秋 2023年2月号

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