★不穏な空気の財務省
悲願の消費税10%を成し遂げた財務省で不穏な空気が漂っている。増税の過程で経産省に譲りすぎた、との不満が中堅に溜まっているのだ。
全世代型社会保障と消費増税は太田充主計局長(昭和58年、旧大蔵省入省)と宇波弘貴主計局次長(平成元年)が中心となり、経産省の新原(にいはら)浩朗経済産業政策局長(昭和59年、旧通産省)をカウンターパートに進められた。今井尚哉首相補佐官兼首相秘書官(57年)の信任が厚い新原氏はキャッシュレス推進や税制改正にも進出し、自民党の甘利明税制調査会長らとともに対策を立案した。
こうした状況に、財務省内では矢野康治主税局長(60年、旧大蔵省)ら一部から不満の声が出ている。今夏の人事では太田氏の次官昇格が基本線だが、岡本薫明(しげあき)事務次官(58年)が続投し、3年次官とすべきだとの意見も出始めた。
だが、2度も消費税引き上げを先送りした安倍内閣において“2度あることは3度ある”とせず、“3度目の正直”を実現できたのは、首相と菅義偉官房長官の意向を踏まえ、経産省とタッグを組むしか方法がないとみた太田―宇波ラインが新川浩嗣首相秘書官(62年)と連携した賜物でもある。
かつて「旧大蔵一家」と称された財務省は、内部でどんなに相克を抱えていても、それを外部に出すことはなかった。旧大蔵省幹部は「そこが外務省や通産省とは違うところ」と矜持を持っていた。省内の不満が公然と外部に出るのは、財務省が並みの官庁になったことの象徴でもある。
★ポスト黒田体制は?
安倍晋三首相の任期が残り約1年半。財務省ならびに日銀はどういう布陣でアベノミクスの「次」を睨んでいくのか。
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source : 文藝春秋 2020年3月号