★官邸官僚の逆回転
栄華を誇った安倍晋三政権の「官邸官僚」たちに、ついに黄昏が訪れ始めた。経済対策と医療問題、2つの異なる問題を抱え込んだ今井尚哉首相補佐官(昭和57年、旧通産省入省)と佐伯耕三首相秘書官(平成10年)の2人が崖っぷちに立たされている。
経済対策では、収入が急減した世帯に30万円を支給する案が僅かな間に覆り、一律10万円になってしまった。もともと30万円案は、財務省と組んだ今井氏が「一律給付はバラマキだ」と推進。しかも、ポスト安倍の最有力候補として今井氏が期待する岸田文雄政調会長が決断したという“茶番劇”まで用意したにもかかわらず、だ。
今井氏らの失敗は総裁選以降を見据えて岸田氏に花を持たせようと、“官僚の矩”を超えて政治家の領分に踏み込んだこと。国会議員の政略に踏み込んで失敗した官邸官僚と言えば、90年代後半、橋本龍太郎政権の首相秘書官として中央省庁再編を仕切った江田憲司氏(昭和54年)の例がある。思えば、今井氏も江田氏も旧大蔵省を敵視する「通産官僚」だ。
もう一つは医療問題。コロナ対策で安倍首相や今井氏はPCR検査の拡大、特効薬に期待されるアビガンの早急な承認を求めたが、鈴木康裕医務技監(59年、旧厚生省)ら「医系技官」の牙城をなかなか崩せなかった。官邸官僚からは「鈴木問題が阻害要因だ」との憤りが漏れたが、医系技官は医師免許を持つ「半官半医」の存在。安倍政権が得意としてきた人事権の脅しが利かないのだ。
やることなすこと、官邸官僚の逆回転が始まっている。
★経産出身者の内ゲバ
コロナ問題の最中、黒川弘務東京高検検事長(司法修習35期)の定年延長にも関わる検察庁法改正案が国会に提出されたが、もう一人の“安倍ファースト官僚”の定年も延長されていた。女優・菊池桃子との結婚で世間を驚かせた新原浩朗経済産業政策局長(昭和59年、旧通産省)。60歳の新原氏は3月末で定年だったが、これで事務次官の目も残された。
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source : 文藝春秋 2020年6月号