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★政権崩壊の足音
新型コロナウイルスの感染拡大。この重大局面で露呈したのは、これまで盤石を誇ってきた政権中枢の危機的状況だ。菅義偉官房長官と今井尚哉首相補佐官(昭和57年、旧通産省入省)の緊張関係である。官邸に通じる官庁幹部も「菅さんと今井さんの齟齬は外部にも分かるようになってきた」と声を潜める。
政略面では第1次、第2次政権をつくった立役者である菅氏への安倍晋三首相の信任はまだ厚い。だが、政策面においてはこれまでの傾向でもあった「最後は今井氏の言い分を聞く」との首相の好みが顕著になっている。
事実、コロナ問題では、感染症の拡大防止と経済対策の両面で前面に立ったのは、今井氏だった。首相と今井氏主導で決まった小・中・高の一斉休校も、菅氏は事前に知らされていなかったという。
古谷一之官房副長官補(53年、旧大蔵省)を巡る人事でも、菅氏の希望は叶えられなかった。9月をもって公正取引委員会委員長への転出が固まった古谷氏のことを、菅氏は側近の和泉洋人首相補佐官(51年、旧建設省)とともに高く評価してきた。菅氏には、4月で79歳となる杉田和博官房副長官(41年、警察庁)の後任に据えたい意向もあったが、首相が跳ね返したという。
一方、今井氏と歩調を合わせるのが、内閣情報官から現職に横滑りした北村滋国家安全保障局長(55年、警察庁)だ。3月5日に首相が表明した中国・韓国からの入国制限の強化なども菅氏ではなく、今井氏が主導し、北村氏が調整を指揮していた。
今井氏と北村氏のコンビが岸田文雄政調会長をポスト安倍に推し、「岸田官邸」で要職を占めようとしているとの観測も広がっている。これに対し、菅氏は「石破(茂元幹事長)と岸田なら絶対に石破が勝つ」と漏らすなど、岸田氏に手厳しい評価を下してきた。ポスト安倍に関しても、今井氏と菅氏の溝は深まっているのだ。
ただ、今回の危機的局面では、今井氏らが後継総裁と見込む岸田氏に花をもたせて実績を上げさせる余裕が見えない。経済対策策定にあたっての岸田氏の発言は、首相官邸サイドとすり合わせたものではなかったからだ。「トップダウンで事を進める今井氏のやり方は、根回し不足も目立つ」(主要官庁幹部)との不満の声も上がってきた。
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source : 文藝春秋 2020年5月号