月刊「文藝春秋」の名物政治コラム「赤坂太郎」。
「政界、一寸先は闇」。自民党元副総裁だった川島正次郎の至言は今なお生きるが、その闇を新型コロナウイルス感染症という変数が攪乱する時代の到来を、誰が予期したか。
漆黒の政界を読み解く鍵は、不変の政治日程だ。公明党が天王山と位置付ける東京都議選は来年夏で、その前後3カ月の衆院解散・総選挙は体を張って阻む。来年9月は自民党総裁安倍晋三、そして10月は衆院議員のそれぞれ任期満了。来秋の総裁選となれば、自民党では直後の衆院選を意識して、元幹事長石破茂へ雪崩現象が起きかねない。こう俯瞰すると、解散にせよ退陣にせよ、安倍が主導権を握って政局に挑めるのは年明けまでの半年間に絞られる。暗闇の政界を手探りでほふく前進する安倍の陰に見え隠れするのは、あのパナマハットの男だった。
「何を言っても総理がやる気出さねえんだよ」。コロナ拡大を受け、副総理兼財務相の麻生太郎がそう嘆くのを聞いた者は少なくない。安倍は内閣支持率が下落し、政権が窮地に追い込まれた時、必ず麻生に相談を持ち掛ける。
一方、安倍後継の最も有利な位置にありながら、判断力、決断力に欠け、政治的な資質に疑問符が付きまとう自民党政調会長の岸田文雄。彼の事実上の脱落が鮮明になった瞬間は6月10日の昼下がりだった。首相執務室で対峙したのは安倍、麻生のツートップ。
「岸田、(支持率が)上がらねえな」。麻生がこう切り出すと、安倍は一瞬間を置いて「河野(太郎防衛相)さんはどうですか」と探りを入れた。麻生は「だいぶ良くなってきたが、まだじゃねえか」とつれなく返した。安倍が河野の名前を挙げること自体、岸田断念に傾いた証左にほかならない。
そもそも安倍が岸田に後を任せようと判断したのは、端的に言えば「岸田なら院政を敷ける」との目論見だ。国民的な知名度と人気は石破に軍配が高く上がる。無派閥の若手を40人ほど束ねる官房長官の菅義偉も岸田後継に反対し続けていた。
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source : 文藝春秋 2020年9月号