今回のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平投手と共に日本のファンを虜にしたのが、セントルイス・カージナルスのラーズ・ヌートバー外野手だった。
ヌートバーの代表入りには反対の声もあがったが……
ヌートバーは日本人の母・久美子さんと米国人の父・チャーリーさんの間に生まれた日系2世で、生まれも育ちも米国のロサンゼルスである。もちろん日本で生活したことはなく、日本語も話せない。米国籍のため五輪やプレミア12などの国際大会では、日本チームでの出場資格はないが、両親のいずれかが国籍を保有しているか、両親のいずれかが日本で出生していることが条件のWBCで日本代表の一員に加わった。
日系選手が日本代表チームでプレーしたことはなく、チームのグローバル化を掲げた栗山英樹監督が、目玉選手として招集を決めたものだった。
現在25歳のヌートバーは2021年6月にメジャー昇格を果たし、22年の夏過ぎにカージナルスで右翼のレギュラーポジションを獲得した。期待の若手外野手であることは間違いないが、その一方でチーム内ではまだまだレギュラーが確定したわけではない。そんな2世選手の代表入りには、一部で反対の声があったのも事実である。しかしWBCが開幕すると、ヌートバーの明るいキャラと闘志むき出しのハッスルプレーがそんな雑音を吹き飛ばした。
1次ラウンドの最大の強敵と言われた韓国戦では3回に3点をリードされた直後に、反撃の狼煙を上げるタイムリー安打。5回にはセンター前に落ちそうな浅いフライをダイビングキャッチするファインプレーで日本の応援団から喝采を浴びた。
「ニッポン、だいすき! みんなありがとー!」
お立ち台でこう叫んだ若者に、ベンチから温かい視線を注いでいたのがサンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有投手だった。
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