「陰陽師」の悪役を演じる

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晴明のライバル、蘆屋道満の胡散臭くも得難い魅力

 平安時代を舞台に、陰陽師・安倍晴明が、親友の源博雅と共に幻術を駆使し、難事件に挑む。作家・夢枕獏氏が30年以上にわたり書き続ける「陰陽師」。これまで映画・マンガ・アニメといったメディアミックスが数多く展開されており、四月大歌舞伎では『瀧夜叉姫』を原作に「新・陰陽師」として上演されている(4月27日まで、歌舞伎座・昼の部にて)。脚本・演出を担うのは市川猿之助氏。さらに猿之助氏は晴明のライバルで老獪な陰陽師・蘆屋道満(あしやどうまん)も演じている。

 夢枕 お久しぶりです。10年以上前にラジオで共演して以来ですね。今回、猿之助さんが脚本と演出だけでなく蘆屋道満を演じてくださるということで、ぜひお目にかかって、お話ししたいと思っていました。

 猿之助 私のほうも蘆屋道満は、先生の中でどんな位置づけの人物なのかお伺いしたかったんです。

 夢枕 僕の小説では、蘆屋道満は帝の御前で晴明と方術比べをする敵役だけど、ただの悪役じゃない。軽妙洒脱というか、不思議と人を惹きつける性格の持ち主です。もともとの設定は、得体の知れない胡散臭い人物で、陰陽師としての実力はあるけれども晴明の敵役といったところだったんですが、だんだん愛着が出てきて。晴明と酒を酌み交わすシーンもあります。

 猿之助 史実では道満は公家なんですか。

 夢枕 それがよく分からないんですよ。古典だと陰陽法師(法師陰陽師)という呼ばれ方をしている。昔はあまり陰陽師と坊主(法師)の区別がつかなかったんです。坊さんより陰陽師のほうが稼げるから、両方やって、あちこち渡り歩きながらお金をもらっていたらしいです。

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source : 文藝春秋 2023年5月号

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