私のモヤモヤ交友録

美輪 明宏 歌手・俳優
エンタメ 社会 芸能

寺山修司も柴錬もみんな悩んで大きくなった

「前妻の娘と再婚した妻の仲が悪い」
「同性愛の関係が後ろめたい」
「マッチングアプリや街コンで男性と出会うことに疲れ果てた」
「このまま地下アイドルを続けるべきなのか」

 NHKEテレ『美輪明宏 愛のモヤモヤ相談室』(毎月最終金曜夜10時放送 再放送・翌週火曜午前0時)には、こんな悩みが寄せられる。回答者である美輪明宏さん(御年88)の厳しくも愛にあふれる金言が話題を呼び、番組は今年で4年目を迎えた。歌手・俳優・演出家として活躍する傍ら、長年身の上相談に乗ってきた美輪さん。なぜ、美輪さんのもとに「モヤモヤ」が集まるのだろうか。

 人間の悩みは本質的に変わらないと思いますね。家族の悩みが多いのは今も昔も変わりません。いまだに本家、長男、嫁などと、続柄を示す言葉に縛られている人が多いです。

 それでも封建主義から民主主義の世の中に変わって、性的に弱い立場にあった女性などが、これまでは他人には言いづらかった悩みを打ち明けられるようになったのではないでしょうか。市川房枝さんらによる婦人参政権運動が盛り上がった頃からその傾向はありましたが、最近よくある悩みのひとつに性に関することが仲間入りしました。例えば、番組内でも、夫との性生活が少なくなったことを相談された方がいました。

 あと、今はしがらみの多い時代ですね。インターネット上では誹謗中傷が溢れ、炎上というのが起こり、みんなが裁判官気取りです。人をやっつけることによって楽になりたいのでしょう。これからますますひどくなりますよ。

 芸能人の不倫が明るみに出れば、社会的に抹殺されてしまうご時世です。不倫というのは古来ずっとあって演劇も音楽もそれを種に名作が生まれてきました。『アンナ・カレーニナ』を読めば分かることです。

 私なら、スキャンダル報道に怯える芸能人に「じゃあおまえら記者はどうなんだ」と返す刀を持ちなさいと、アドバイスします。一般の方も、悪口を言われたら、「おまえも他人のことを言えるのか」と返せばいい。自ら被告人席につくことはありません。攻撃してくる人たちは、自分はまともだと自惚れているのですから、その化けの皮を剥ぎ取ってやればいいのです。

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source : 文藝春秋 2023年7月号

genre : エンタメ 社会 芸能