「昨日、藤田真央さんとチェコ・フィルのソウル公演を聴いて参りました。聴衆も大熱狂で、演奏もこれまでソウルで聴いた日本人ソリストのなかでは別格でした」
韓国・ソウルの漢陽女子大学助教授・平井敏晴さんから、こんなメールが来たのは10月末のことでした。平井さんの専門は東アジア美術のマニエリスム。私が韓国出張した際に取材のお手伝いをして貰ったことがあり、以来、原稿をご執筆頂いたり、韓国情報を教えて頂いたりする仲でした。
「え!」とメールを見て思わず声を出して驚いてしまいました。実はちょうどその翌週、私はそのピアニスト・藤田さんの取材をすることになっていたのです。藤田さんは2019年、世界三大コンクールの一つ、チャイコフスキー国際コンクールで2位に入賞した気鋭の奏者。2023年2月には『情熱大陸』(TBS)に出演したことでも話題になりました。
平井さんによると、ソウルでの藤田さんの人気ぶりは「もの凄い」とのことで、
「コンサート会場に併設されている音盤売り場では、日本人として唯一、バナースタンドで大きく紹介されていました。藤田さんがソウルで演奏するのは、チャイコフスキーコンクールで入賞した後の凱旋公演以来、2回目です。名門のチェコ・フィルに巨匠、セミヨン・ビシュコフのタクトだったので、余計に話題を呼びました」(平井さん)
さらにコンサートのパンフレットには、こんなフレーズもあったそうです。
「ジブリのアニメに出てくるキャラクターが思い浮かぶほどカワイイ!」
果たしてジブリのどのキャラクターが似ているのかは不明ではありますが、とにかく、かの国のファンが藤田さんに熱狂しているのは確かなようです。
そして取材当日、藤田さんに知人がソウルのコンサートに行っていたことを伝えると、「え! ほんとうですか!」と驚きつつ、喜んでくださいました。
そんな藤田さんが、「ゲン担ぎ」「恩師から教わったこと」など、普段から大切にしていることについて語った「ピアノは自分をよく見せるために使わない」は、2024年新年号に掲載されています。ちなみに取材の際にはピアノの生演奏もしてくださり、その様子は電子版で絶賛公開中です。
(編集部・柳原)
source : 文藝春秋 電子版オリジナル