バブル崩壊で脱出したエリートが創る「新しい中国」

中国人が祖国を捨てる理由とは

柯 隆 エコノミスト
ニュース 社会 経済 国際 中国

 中国経済の失速が報じられるようになって久しいが、公式統計をみると、中国経済は今も順調に成長しているように見える。中国の公式メディアは「問題はあるが、総じていえば、中国経済は依然安定して成長している」と主張している。

 しかし、中国の人流をみると、明らかに異変が起きている。2023年、コロナ禍が終息し、海外旅行が徐々に自由化された。それを受けて、中国の富裕層と中間所得層の人々が大挙して海外へ移住しているのだ。

 普通、経済が順調に成長している国であれば、その国民は大挙して海外へ移住しないはずである。さらに言えば、習近平政権は強国復権を呼び掛け、学校教育のなかで愛国教育を強化している。

 国を愛する中国人はなぜ、祖国を捨てて海外へ移住しているのだろうか。

柯隆氏 ©文藝春秋

コロナ禍による二つの後遺症

 コロナ禍は人類史上最悪の災難だった。しかし同時に、その災難にどう対処したかによって、その国の政府の統治能力を浮き彫りにした出来事だったとも言える。コロナ禍への初動対応について、多くの国の政府はウィルスに関する情報不足からパニックに陥り、感染の拡大を食い止められなかった。一方、中国政府は即座に厳しい行動制限や強制隔離措置をとり、感染の拡大を防いだとして世界から称賛された。

 時間の経過と共にウィルスの毒性は弱くなり、ワクチンと治療薬も開発され、多くの国ではコロナ禍以前の生活が戻ってきた。そのなかで唯一中国政府は、隔離措置を弱めるどころか、大都市を中心にロックダウンを続けた。もっとも愚かだったのは飲食店などのライフラインも停止したことだ。

 結果的に中国では、コロナ禍の3年で400万社の中小零細企業が倒産したといわれている。どの国も同じだが、中小企業はもっとも雇用に寄与するセクターである。これだけの中小零細企業がつぶれた結果、若者の失業率が大きく上昇することとなった。2024年に入っても、景気は一向に改善されない。同年6月に大学・大学院を卒業した学生で、内定を得たのは5割未満だった。

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source : ノンフィクション出版 2025年の論点

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